（０９３１）愛する地球の慈しみと苦痛と

　生命サイクルもただぬるま湯の安定が続くわけではない。それではカオスの縁から安定した死の世界に落ち込んでいくだけだ。カオスの縁のパターンにも変動がある。現在はその安定点が量子的飛躍をする時なのではないだろうか。個人の内なる環境にあるあらゆる常識は、それにすがり付く者を振り払うように自ら覆りつつある。外なる環境もまた恒常性をかなぐり捨てようとするかのようにのたうち回って、カタストロフを予見させ続ける。

　それは人間の傲慢さに対するしっぺ返しであり、人類や生物が死滅しても地球は別に痛くも痒くもないのさ、というペシミズムが滲み込んだ自然主義者もいる。しかし地球が太陽の一部であるように、傲慢なる人間もまた地球の一部なのだ。自らの部分である人間が苦しみつつも活路を見出そうとしている時、それを寄生虫や病原菌を見るような目で眺めているはずはない。

　ガン細胞とは自分の様々な生き方の結果と経過として、目に見える形で現れた者なのだ。ガン細胞だけを切り捨てるだけで事足りるという生命の意識では、自然治癒力の発動もおぼつかない。 「地球に優しい」というエコロジカルなスローガン。そこからは人間の愚かさが染み出ている。「地球は優しい」のだ。人間的発想を超えた地球の慈愛。それに対する感謝があれば、地球のより深い苦痛もまた感じ取れるのだろうが。

２０１３のジグソーパズル(５−５)