 19870214 無意味の海
意味を求める限りに於いては無意味が分からない。あるがままがそのまま無意味である。しからば依と正の関係性に意味を見出すことをせず、依正不二のまま正たる主観、｢彼」が依も正もないあるがままに戻ればいいのだ。とするとその戻り方だ。永久に無意味の世界へ身投げして溺死するというのも―つの戻り方だ。それは確かに無意味だ。また、もともとその意味の島も海であり、たまたま水面上に出ていると考えれば、そのメタファーから無意味でありつつ意味があり続けることも可能なはずだ。そもそも意味とはそのようなものだ。
無意味の海に浸かっている時、｢彼」はもはや｢彼」ではない。そして実は常に浸かっている。というより分離不可能の海自体である。全体と部分は存在していない。｢彼」が意味という大陸もしくは島に、存在という限定意味を纏って上陸した。上陸させたのは｢彼」自身の、そして海自身の意志（と陸地では呼び習わしているもの）である。｢彼」にとって陸地とは先人達の生きる意志（そしてそれの生んだ観念）の総体と、｢彼」のそれとの共通項である。
上陸しつつ海の中につかっているということをメタファーで表現すれば(メタファーと言っているのは直喩でありかつ隠喩でもある。乱暴に言えば意味の大陸の言語は総てメタファーである)この体内で血液濃度が海水の濃度と酷似していることから、人間とはトポロジー的に内側にめくれ込んで自らを包み込んだ海そのものだ。従って人間は閉じた系ではなく、トボロジー的めくれ込みを開き直せば（そして開き直せるという意味に於いて）有限ではなく無限なのだ。それゆえに二元的表現の外世界、内世界でいう精神世界という内世界とは二元論的言辞を超えて外世界を含む無意味の海に通じていて(無限)ｎなのだ。彼は無意味でありつつ意味である。
吉祥寺百景（０５０）19870214
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