女王ミーファは一体ではなく、合の時が終わってもその相手が足りない者は夜な夜な男を誘うように高い声で歌う。訪ねれた男性は生気を吸い取られて干枯らびるまで性交を続けざるを得ず、もはや身体が一匹の精子すら製造できなくなるとぼろきれのようになって死ぬ。働き蜂である普通のミーファの寿命は１３年で、合の前の同じ日に生まれた所である神殿に集まろうとして、カ尽き死んでいく。合が明けるとその最後の波動で彼女等の細胞組織のたがが外されて急速に解体していき、その後の最初の朝日を浴びると、その光の波動によって速やかに風化していく。
生まれたミーファ達は太陽の光だけで成長していき、その中で特に大きい者だけが、ホルモンの関係からか生殖器が分化して自然に女王ミーファに分岐していく。そしてまた巡り合った異星の男を、来たるべき合に備えてそれぞれの神殿の奥に保存する。保存された男達はそこから逃げることはできないがかなりの自由がきき、他の星の男とも話ができる。
実は私もまた現在とりこの身となり、そこの男性達の話をまとめてこの報告書を記しているのである。多くの美しい裸の少女たちにかしずかれ、望む物のほとんどを与えられるこの生活が、不幸なのかそうでないのかすら今は分からない。ただひとつの気掛かりは、この報告書が我が地球の人の目に触れるかどうかということだ。それにしてもこの星の生まれたままの美しい娘達の無言の生活は、なんと滑らかな風景なのだろう。
吉祥寺百景（０４６）19861231
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