Ｚ系第３惑星オメガに関する報告書 記録者Ｃ
 惑星オメガはそれぞれ周期の異なる３つの月を持つ。この３つの月は１３年に一度一直線上に並び、母星オメガに多大な影響を与える。第一次探査隊はちょうどこの時期にオメガに降り立ったのである。この星には様々な生物が見られたが、特筆すべきは何と言ってもその形態が人間の美しい少女そのものであるミーファ（そう命名された）であろう。そして我々はこのミーファによって壊滅させられるに至ったのである。
ミーファは蟻、蜂などに似た社会形態を持つものと想像される。人間的知能はなく、それぞれの個体は社会という大きな有機体の細胞的機能を果たすものと考えられる。彼女らは生殖器の不在から最初無性生殖するものと思われたが、後に女王蜂的存在の、人間のそれによく似た生殖器を持つミーファが発見されるに及んだ。
ミーファは３つの月が合になる時、生殖活動をする。相手はオメガに訪れる他星の様々なヒューマノイド系の男性である。月の三重合の時以外の訪問者も、ミーファと遭遇した者はその役割から逃れることはできない。彼等は働き蜂に当たる、輝くばかりに美しい裸の少女達に魅せられて神殿に誘われる。そしてそこで麻酔のようなものをかけられて、生きたまま保存されて合を待つことになるのだ。
女王ミーファは１３年に一度その聖なる授精者と交わり、精子の一匹も無駄にすることがないように絞り取り、無数の卵を産む。異星人の精子は単なる細胞分裂の触媒的な引金に過ぎず、針の先などで刺激を与えるだけでも卵細胞は息を吹込まれるのであり、究極的にはやはり無性生殖と同値であると言えるであろう。この一連のことはオメガの３つの衛星から来る波動によって引起されるのであるから、彼女等の父はこの３つの月であるとも言えよう。
吉祥寺百景（０４５）19861231
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