 私の興味はひとつことを完遂する前に、別のことへとどんどんスライドしてしまう性向がある。ほとんど全てのことがやりかけのまま置き去りにされ、多くのことが忘れ去られてしまっていする。常に成すべきことのほうが、それをこなす物理的時間よりもはるかに多いという意識がある。少し脅迫観念に近い実感に後頭部を小突き回されると、今やるべきことが多すぎて、とてもいまやるべきことなんてやっていられないというパラドキシカルな心理状態に陥ることもあった。
しかしそれはそれで決してただの短所・欠点ではないと考えるようになってきている。完遂された結果も重要だが、スライドしていく興味対象群の、一見連脈のなさそうな間にある相似形や合同性にも、重大な意味があるのではないだろうか。なぜ横滑りするのか。ひとつことを完遂するという強き意志が欠落しているというのも事実だが、それを踏まえつつも横ずりしていく時のドライブ感そのものは、決して悪いものではない。
無自覚のままではなく、上手く手綱を取りながら道なき道を進み行くには、行きつ戻りつしゆく中での一貫した方向性と目的感が必要となる。そこには常に興味が移り行くにしたがって、意味の書き換えが行われなければ連結が断たれ、それぞれが有機的にリンクすることがない。飽きっぽいくせに一つ事に取りつかれ続けるということは、そこに何らかの一貫性があり、かつ広範な視座があるとポジティヴに考えてもいいのではないだろうか。
非・人非人日記(９)
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