 日本各地の有名無名の神社を訪れては、調査や調整を続けているフィールドワーカーのお宅にお邪魔して、その話を聞き、研究成果を見せてもらった。彼自身も神道の宮司としての資格を持ち、また「かみごと」的な信念とビジョンに基づいて行動しているのだが、神道的素養がない私には、その現実的な意義や効果は正直なところ良く分からない。しかし北海道から沖縄の離島まで日本各地を訪れ、２０数年もの間休むことなく研究を続けていることだけでも、安易にコメントできない重さを感じさせるものがある。
その山のような資料と記録の中で私が目を引かれたのは、和紙でできている１冊の記帳だった。それは各地の神社を訪れた時、そこの宮司にしたためてもらったという特別なもので、そこには現在全部で４７のページごとに神社の名前と主祭神の名が記されているのだが、その毛筆で書かれている文字の美しさが私の目を奪った。文字の形や癖などはみな異なっているのに、それぞれ独特の完成された筆跡を持ち、個々の筆文字の形状や全体の均整・勢い・流麗さが素晴らしい。
画家や彫刻家や音楽家や舞踏家、武術家やスポーツマンなども、その技芸の大前提として耐えざる鍛錬がなされているが、この毛筆の美しさも職務がら繰り返し書き続けていく上で完成されていったものなのだろう。もちろん宮司さん自身の心身両面での生活姿勢や気の流れなども表れているに違いない。
お筆先というものがある。西洋風に言えば自動書記、つまり自らの意志とは関係なく手が文字や図柄などを描き、何らかの超越存在が個人や人間一般にメッセージを語るという類のものだ。フリーエネルギーの研究をしていた知人の１人は、もう１５年以上前のある日、宇宙人からメッセージを受けたといって実際に機械とグッズを創出し、癌で余命幾ばくもないと診断された自分の母親を回復させてしまった。その母親は現在でも健やかに存命中だが、その当時彼が突如毛筆で描き始めた文字や絵画は独特のエネルギーに満ちていた。
宇宙人や霊や未来人や神仏的存在などと解されている超常現象の類は、世界観の違いから異なる解釈をされている何かではあろうが、お筆先、チャネリング、自動書記などで書かれた文字と、前述の宮司さんたちの書いた筆文字との決定的な違いは、自らの明確な意識でそれを成したか、自らを超えたものにその心身を操られてそれを成したかである。自らの成したことを一切責任転嫁しない確固たる自分。そのエゴや自我とは別次元の道筋をどこまでも成し続けていけば、その軌跡はやはり美しいに違いない。さてでは私も筆と硯を購入して、半紙に向かって真似事でもしてみることにしようか。
20001113mon,KIN209,red
magnetic moon
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