 子供はいつも「ねえ、なぜ？」「どうして？」と質問をする。飽くことなく問いを世界に投げかけ続ける。母親や大人たちはその問いの全てに応じきれず、時には嘘を教えたり怒鳴りつけたりもする。しかし私はできるだけ答えてやりたい。子供たちにはまだ自分が問うということ自体に対して自問することができないからだ。しかし見る者は見られる。聞くものは聞かれる。そして問う者は問われる。
私たちも疑問が生じると、答えを求めてよく他者に質問をする。しかし質問に対して相手は必ず答えてくれるものだと考えているとしたら、それはひとりよがりの思い込みに過ぎない。答がないのも１つの答である。言葉にできない答もあれば、問うものの無知ゆえに答を与えぬこともある。また問う姿勢自体を巻き込む問いかけ返しもある。Ａ「何？」Ｂ「何？」Ｂのは発せられた問いそのものに対する、その所以を問う質問。そしてこの対はもっとも短いループのパラドクスの１つだ。
私の方が先に質問したのだから、そちらが先に答える義務があると主張することはナンセンスだ。より真摯に答えるために、質問の質を問う問いかけ返しをする。それに答が得られなければ、答えようとする側も答えられないこともある。問う者の問いに解を得る優先権なぞありえないのだ。私たちの認識前提にしている時空序列と質疑の論理的展開そのものが、日常生活では理不尽なのだからしかたない。
自分の望む答だけが、答ではない。むしろ意外な答こそがより真実に近い。いつも望み通りの答が返って来るならば、それは演ずる必要もない不毛な１人芝居なのだ。問いは発せられたその時点ですでに解を内包しているといわれる。しかしその解に到達するまでに何十年もかかることもある。問うことの大切さと共に、問う姿勢そのものの大切さを知っていれば、問いと答の間にリニアルな時空序列はないということが良く分かる。未知の解を引き出す最短ルートは、最善の問いということになる。直観や霊感という解が先にあり、長い時間をかけてそれに対する問いを構築していく学者や芸術家もいる。
それでも私は自らに問い、そして他者に問おう。自らの内部より浮かび上がる疑問がなくなる時、生物機械としての条件反射運動が始まる。解答が閃き、疑問がかすめる。不思議を追求しつづけている限り、精神的な老いはなりを潜める。教育とはこの世界に適応するための洗脳でもある。しかし真の教育とは、その洗脳を自ら解き放ち、この世界を自ら変えゆくに足る力を発生させるための偉大なる触媒であるべきだろう。ひとり虚空に向かって問おう。問い続けよう。
20001103fri,KIN199,blue
self-exesting storm
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