19880331-6 観念の幻想
君は言う。人問は孤独なものだ。一人生れ、誰とも愛し合えず、一人死んで行くと。君は自分の作った観念にがんじがらめになっている。自分の考えが正しい事を証明しようとあらゆる苦痛に耐えている，誰かが親愛の情をこめて近付いて来ても拒む。自分が拒む限り、少なくとも自分にだけは愛の幻に落ち込まないと嘘吹く。その観念こそが幻であるとは考え付きもせずに。そして世界の誰も彼もが敵だと思い込む。そうすると皆が敵になっていく。君はその観念と心中する必要なぞないのだ。君は観念ではない。君はそれをあっさり捨て去る事もできる存在なのだ。
君は愛はすべて幻だと言う。しかしそう言わせる観念こそが幻である事に思い及ばない。そのかじりついている観念が幻だとしたら、君は自分の依り所が無くなると考えている。依り所なぞ元よりないのだ。何も無い所がすべて有る処だとは思いもよらない。そして苦しみ続ける。その方が楽だからだ。幻を幻と見る勇気がないのだ。観念が無いところでは死んでしまうと思っている。死んでみれば良い。そこは溢れるほど生に満ちているかも知れないではないか。
でもどちらでも良いのだ。それは君が苦しむのは辛いけれど、それはそれだからね。強制されての自由は自由では無いし、それはそれで自然なのだから。
19880406 未明、シャム猫の明珠が、産んだばかりの子猫を一匹くわえて入ってきた。夜帰宅したらもう子猫はおらず、しつらえてやったダンボールは空だった。どこへいったのだろう。明珠は一晩、床の中でいっしょに眠った。
19880407 朝からの雨が夜になるとみぞれに変わり、水っぽいながらも積もり始めた。公園の三分咲きの桜の上に雪が舞う。なかなか見れぬ光景だが、寒いのですたすたと帰宅する。
吉祥寺百景（０９９）19880331
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