19880331-3 桜のつぼみがまさに綻び出ようとしている３月末日。爆発寸前の緊張感のようなものを1988年の春、ここ井の頭公園で感じた。相対的な世界ではこのように時と所を限定して表現せざるを得ないが、この春を迎える喜びは不変なのではなかろうか？
19880331-4 だるまは倒しても倒しても起き上がる。その中心を突き抜けて起き上がらせる流れ、ライフライン。それを物理的に解釈して重力と重心の関係だと捉えてみても、それそのものは見えない。重心を先の生命べクトルに、重力線をライフラインに当てはめてみても、それはやはり解釈であり、たとえである。ではこのたとえを人間に当てはめてみよう。もちろん重力だけではなくたくさんの要素がライフラインを作るであろうが、重カだけを取ってみても人間は能動的に重心を移動でき、しかも本体も無限の運動形態と移動をする。しかも物理的にではなく感情、思考、そしてそれ以上のもので。
19880331-5 新生
この世界に於いて自分の絶対的孤独に気付いてしまった君は新生するしかない。時が満ちたのだ。胎児はやがて外界に生れ出る。君は温かい液体の中で何の心配もなくまどろんでいた。子宮の中が全世界だった君の実在は相転移する。産道を通り抜ける時君は測り知れない苦痛を覚える。もう戻れない。戻ろうとすれば後ろ向きの死が待っている。前向きに死ぬが良い。そして相転移して新生するのだ。未知の次元へ。それが自然の流れなのだ。真の人間として覚醒せよ。自分で築き上げた幻想の世界、第二の子宮はもう君を産道に送り出そうと収縮を始めている。
吉祥寺百景（０９８）19880331
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