19871127-10 地球は一つの明珠である。その明珠は人間という表面に全宇宙を映す。その明珠を裏返しにして内外反転してみよ。
19871127-11 「彼」はあの猫の事を記憶に執着する事無く決して忘れない。その不在に慣れ、忘却し去ってしまう事も、別の仔猫を貰って来て愛情を注ぐ代用物とする事も、思い出を巡らせてそれに溺れつつ生活する事も、すべて横ずり的な(変容では無く変換である)生き方に過ぎない。(この死を乗り越えて生きると言う時、その乗り越えるべき物は存在せず、自分で作った幻なのだ。ただそれが現実に感じられる者にとってはまさに現実以外の何物でも無く感じられるという事だ。)
それでも忘れないと言う事。それはそのまま在るがままであるという事である。在るがままとはビデオの静止画の様に高速回転するドラムのおかげで同じ状態に留まっているという事では無い。モニターからは常に新しい映像が映り、過去の映像は最早どこにも存在しない。
19871127-12 悲しみは記憶の上に在るのではなく、記憶と現在意識の干渉として生じる。今日の最初の記述で分かるように、最初の記憶の中には悲しみが感じられないと言うリアルタイムリポートの様な実感しかない。しかし今その時を回想する事によって憐れみ、悲しみが生じる。それがまた新たな記憶になって再度回想する時その悲しみは増幅する。執着してその様な条件反射的な回想及び増幅する悲しみを感じる意識状態を幾度も繰り返すと、やがてその時の記憶と悲しみは機械的に１つになる。
そのようなプロセスから自由になる事！しかも忘れ去らぬ事。かつ悲しみを見つめこそすれいっさい切り捨てぬ事！
吉祥寺百景（０８９）19871125
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