（C013）

■１■１日１日に吉凶を認めないという宗教的な信条もあれば、１日１日が明
確に異なる力を持つとは証明されていないという科学的見解もある。逆に１日
１日にそれぞれ異なる特別なエネルギーを想定する暦や、自分自身の誕生日を
エゴとは別にやはり特別なものと捉える視座も、人間として不自然ではない。

■２■暦を変えればその世界観も変わる。世界が変われば自分の在りようも変
わらざるを得ない。世界暦、銀河暦、宇宙暦。しかし外在の暦によって受動的
に変えられるだけでなく、能動的に変わり行くための１つの手段に、自分暦を
作るということが考えられる。自分の誕生日起点の、内なる様々な生命周期。

■３■私が中学２年の時、１月１日生まれの友人がいた。彼は自分の誕生日が
皆の共通の暦の元旦でもあったので、何か特別な自負を持って生きていた。し
かし私は５月18日という自分の誕生日に際立った特徴も見出せなかった。そこ
で私は、ならば自分の誕生日を元旦とした｢自分暦｣を作ってみようと考えた。



■４■当時はまだグレゴリオ暦と言う名すらも知らず、「西暦」が知っている
唯一の暦だった。グレゴリオ暦の５月18日を元旦とし、１年を12ヶ月に割り振
ろうとして初めて､365日という数とまともに対峙した。１ヶ月を30日にすると
５日余ってしまう。30日・31日と交互にすると、最後の12月が１日不足する。

■５■誕生日前のゴールデンウィークだったと記憶している。一晩試行錯誤し
たけれどベストな打開策が見つからず、電卓もパソコンもなかった当時、手計
算でカレンダーを変換していったので、不本意ながら最終的に各月の日数は西
暦に準ずることにした。当時のメモはもうないが、以下のようなものだった。

■６■この時私は初めて、日数計算は普通の計算と違って足し引きする時１日
ずれるということに気が付いた。「そう言えば１月０日とか西暦０年とかはな
いな、自分もその時間の中に入ってしまっているからそうなのだろうか」など
と考えたが、結局なぜ０年０月０日が存在しないのか分からないままだった。

■７■自分の誕生日が西暦の18日なので、これを１日にすると１ヶ月31日は13
日ずれるということには気づいていた。18日と13日の和が31日になるというこ
とだ。今ならば13：18はマヤの神聖暦ツォルキンの 260日と、農耕暦ハアブの
360(＋５日の余日なし)日すなわち１トゥン360日との比率を連想するけれど。



■８■当時は「西暦」が知っている唯一の暦だった。日月は同じなので、元号
の昭和がずっと続くと思っていた。実際には世界には様々な暦があり、異なる
暦を用いれば同じ日も別の日付けになる。吉凶だけでなく様々な異なるエネル
ギーを持つ世界観であれば、暦を変えれば自らの誕生と一生の意味も変わる。

■９■空気のように当たり前過ぎて気づかなかったけれど、別の暦というもの
の存在を知ることで、自分が使っている暦の特徴を客観視することができる。
そしてさらに自らの外側だけにでなく、内側にも自分だけの生命周期があり、
内と外を調和するためにそれを「自分暦」として意識することも重要となる。