METAPHORIC CANON
　　　　　　　（１９８８年，コミック『明珠』制作ノートより。作品は１８８９年の小学館漫画大賞入選。）

　

白　と　黒 　(white and black)

龍樹：
明珠：

龍樹：
明珠：

龍樹：
明珠：

龍樹：
明珠：


龍樹：
明珠：

龍樹：
明珠：

龍樹：

明珠

 真っ暗闇の中で烏とその陰をどう見分けるか？
白がなければ黒もない。光がなければ闇もない。

この白という字は黒い。
白という字は黒という字より心持ち白っぽい。

オセロの駒において白面と黒面の総数は等しい。
相撲においても白星と黒星の総数は等しい。ただし白星は稀に金色に輝く。

白と黒の境は黒と白の境である。
白と黒は永久に混ざらない。ただ灰色という中間色が存在するだけだ。
ところで灰色とは白と黒が混ざってできた色である。

白蟻が害虫だからといって、黒蟻が益虫だとは限らない。
白タクは白い目で見られ、黒魔術は腹黒さに通じやすい。

太陽光線があらゆる波長に渡って一様に反射する事により見える色が白である。
黒とは単なる白の不在である。

白が白であるがゆえに黒が黒であり、黒が黒であるがゆえに白が白ならば、黒は黒ではないし白は白でない。
目を白黒させる事のできる日本人の目はもともと白と黒である。

　

　　　龍樹の独り言　　(Ryuju's monologue)

視覚認識の最小単位は
光子による視覚細胞励起の
オンとオフの差異である
即ち有と無、光と闇、白と黒…

後はその差異の
量による質化の
階型構造である

二元的認識とは
差異を見つめず
差異の両極を
異なる二者と
捉える事による
誤謬である

光なき闇はない
白なき黒はない
有なき無はない

ではその差異を認識する者は誰か？

　

　　　 言 葉 (words)

真実の言葉は
時間軸と垂直方向に
言い捨てられる

人間の言葉は
空間軸の一点界面に
だらりと垂れ流れる

無意味な言葉は
あらゆる時空に染み渡り
所狭しとブラウン運動をする

しかし世界そのものは
すべての言葉を収めてもなお
いかほども変質しない

九九九九と一つの
真実の言葉のみが
世界を反転しうる

19880813R

問いと答え１ (guestion&answer1)

問は水面を渡りゆく波紋であり
答はそれに交錯する波紋である

問は答を求めまさぐるけれど
答は問を受け止める事がない

良き答は問のベクトルそのものを問い返す
時間の不可逆性に寄り掛かる世界秩序とは？

19880808R

問いと答え２　(guestion&answer2)

卵子とは問うもので精子は答えるものだとベイトソンは言った
問とは量的なもので答とは質的なものだとベイトソンは言った

卵子とは男性性の中の女性性の核であり
精子とは女性性の中の男性性の核である

問うものは問われ、問われるものは問う
答えるものは答えられ、答えられるは答える

答なき問の答は問の中に刷り込まれて内在している
問なき答の問は答の中に捲れ込まれて重畳している

次元を超えるため二つは一つになって爆発を始める
二つが一つになるその時差異に沿って慈悲は流れる

水面を渡る風が　眩い光子のほむらをかき立てる
岸辺に枝延ばす　木々の葉裏の水で描かれた点描画

１と２のあわいの黄金分割点に３を見出し得たなら
その重心から４を垂上させて正４面体をつくるのだ

生き上手の死に下手に告ぐ
以下の奇跡を繰り返し想え

あなたの肉体が存在してる事の不思議
あなたの肉体が生きている事の不思議
あなたが自分を意識できる事の不思議
そして共に進化成長できる事の不思議