日本では古来よりかな文字を表すのに５０音図と共に７・５調の伊呂波歌というものがあった。これは涅槃経第十三聖経品の「諸行無常、是生滅法、生滅滅己、寂滅為楽」の意の和訳だと言われている。こちらは４７文字であり、最後に「ん」を入れて全部で４８文字であった。また同様のものに源順（みなもとのしたがう）作の「あめつちの歌」があった。こちらの音が４８音なのは、「え」という音にｅとｊｅの２種があったからである。

「伊呂波歌」
いろはにほへとちりぬるを わかよたれそつねならむ ういのおくやまけふこえて あさきゆめみしよいもせす		（色は匂えど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔いもせず）

「あめつちの歌」
あめ つち ほし そら やま かは みね たに くも きり むろ こけ ひと いぬ うへ すゑ ゆわ さる あふ せよ えの えを なれ ゐて		（天地星空山川海谷 雲霧室苔人犬上末 硫黄猿生ふせよ榎の枝を馴れ居て）

　なおこれらとは別に下図のように５０音図のそれぞれの文字／音に数字を対応させて、そこからさまざまな意味を読み取る数霊（カズタマ）という世界観における音霊数（オトダマスウ）というものがある。この５母音５段の順番は、現在のアイウエオではなく、アオウエイである。前章で見たように５母音のフォルマントの幅とその位置の対称性が小さい方からア−オ、ウ−エ、イであったことを考えると、５０音図の整合性とともに何らかの知的体系の存在が予感できるが、ここではこの世界観に付いてはこれ以上言及しない。

　ところで５０音図には４６の音があるといったが、言葉には文字と音があるので４６の文字もある。これまでにも何度か言及しているが、５つのプラトン立体の面もしくは点の総数は５０である。そして正４面体を除いた４つのプラトン立体の面もしくは点の総数は４６である。そしてその点と面の総数は９２である。５０音図における音は４６であり文字も４６だから、総和はこちらも４６である。４６は人間の染色体の数でもある。元素周期律表において、原子番号４６のバラジウムよりも小さい元素は核融合の傾向があり、原子番号４７の銀より大きい元素は核分裂の傾向を有している。そして自然界に存在する最大の元素ウランの原子番号は４６の倍の９２である。

　これらの数的整合性を視覚的に認識するために、元素周期律表の上に日本語５０音図の音と文字を乗せて同型対応してみよう（赤字の部分。ひらがなで文字を、カタカナで音を表現してある）。また５０音図に重ねあわせた日本語の音節の総数は、実際に数えてみると分かるのだが全部で１０４個ある。（「ぢ、づ」は「じ、ず」と同じ音として外し、詰まる音と伸ばす音「っ」「−」を入れる。）こちらも合わせて周期律表に同型対応して重ねてみよう（緑の文字の部分。なお１〜４６までは赤字の１〜４６までと同じなので省略）。なおこの段階ではまだ１つの元素と１つの音／文字が１体１対応しているという見方はしていない。このような同型対応視もありうるというサンプルとして見てもらうことにしよう。