■私はかつて暫くの間、浅草の小さな禅寺で墓石洗いや仏具磨きなどのいわゆる昔で言う寺男のようなアルバイトをしていたことがある。宗門の教義や作法などは一切気にしなくて良い気楽なものだった。仕事の手順などのメモ帳代わりに使うようにと、最初の日に曹洞宗で作っている宗門手帳を手渡された。

■その手帳は最新のものではなく、使われなかった何年か前の手帳だった。何事も質素・節約の宗旨作法に則った未使用品のリサイクルだった。年が違えば同じ日付だが曜日が異なるが、ちょっとした仕事の手順をメモするだけだからそれで充分だった。４年に１日だけの閏年に仕事がなければ全く問題ない。

■ある日ふと、異なる年のもので同じ日付・同じ曜日のものはあるのだろうかと思った。そこには何らかの周期があるのだろうか？私は昼休みに、過去何十年か分の未使用の手帳が入っている引き出しをひっくり返してみた。カレンダーにおける１日という量子的単位の次の最小単位は７日すなわち１週間だ。
　

■１年を７の公倍数の364として、余日から曜日を外す13の月の暦では毎年日付と曜日が一致したままだが、１年が365日のグレゴリオ暦だと毎年１日の余日があるから、曜日も１つずつずれていくので、７年後には曜日と日付が一致するはずだ。しかし実際は４年毎に閏年が巡り来るので話はややこしくなる。

■しかし算術的に考えれば、単純にこの２つのサイクルの最小公倍数を出せば良いことになる。つまり７×４＝28で、下の表のように28年毎に曜日と日付が一致するのである。1999年と同じ曜日と日付の手帳は1971年のものだった。私はああこんなところにも７×４＝28の構造が出てきているのかと驚いた(※1)。

■私たち一般的な日本人はこの曜日と日にちの完全なる一致の周期に対してさほど関心を持たないが、イースターを祝うキリスト教徒にとってはかなり重要な問題となる。キリストの復活を祝うこの復活祭は「春分の日の後の満月直後の日曜日」なので、毎年移動するその日を把握しておく必要があるのだ。



■このことを禅寺で思いつき、実際に計算したことに何か妙なおかしさを感じてしまい、墓地で落ち葉を掃きながらひとりで笑った。最近の日本では「成人式」の祝日がこれに近いが、個人的にはもはやほとんど重要ではない。あそこは曹洞宗だから宗派は違うけれど、そういえば法華経は８巻28品だったな。

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(※1)後日、スティーブン・ジェイ・グールドの『暦と数の話』という本の中で、彼の息子がこれと同様の計算をしていたことを知った。

GUIDE 28-004　西暦における日月・曜日の同期と28