2011.10.01 Saturday　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

■午前３時45分、みかんが夜間行動を開始する。なぜかそれを見ている私もほぼ同時に目をさましている。まだ新聞配達には１時間早い。みかんが玄関に行って大声でホアーホアーと鳴くと近所迷惑なので、隣室の押し入れや書斎の窓際などについて回る。未明のひとり『パラノーマルアクティヴィティ』状態。

■午前４時40分。隣りのマンションの入り口を窓から覗く。バイクはない。まだ来ていないのか、もう行ってしまったのか分からない。45分、ようやく来て配達を始めている。今日は少し遅れているようだ。50分。まだ来ない。５時になったら共有灯が消えてしまう。急いでくれ。…て、なんで朝からハラハラと？

■４時56分、エレベーター稼働開始。みかんがドアの隙間にへばりつく。デルピーものそりと参入する。５階のドアが開く。「ふう、よいしょ…。おはよう、かしこいねえ。」配達員さん、今日はセリフ少し多し。デルピー、ミッション終了とばかりにゆっくり奥に走り去るが、みかんはずっと外を見続けている。

2011.10.02 Sunday　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　

■午前３時45分、またもやみかんが夜間行動を開始する。寒くなってきたので寝床を夏モードの居間から寝室に移動した。みかんはその横の押し入れの中で寝ていた。しかし場所は目覚めと関係ないらしい。というか、今朝も１時間起動が早いだろう。どんな脳内タイマーと行動目的があるのだろう、こやつは？

■放っておくと玄関でまた猫的遠吠えするので、私は半分寝ぼけたまま居間に移動して横になる。あの生命力溢れる大声が玄関で始まったら、私が身を起こすだけでみかんはすっ飛んで戻ってくるからだ。近所迷惑をおもんぱかって私が怒ることを知っているのだ。それにしてもその鳴き声は何のためなのやら…。

■みかんは怒られると察知して速攻で奥に戻って来るのだが、それでもやはり鳴きたいらしく、しばらくするとまたまだ開けていない玄関ドアの前に行ってホアーホアーと鳴く。私が身を起こす。ダッシュで戻る。私が上体を30度起こしても全速で戻ってくる。しばらくするとまたトコトコ玄関へ…。千日手かよ。

　　　

■そうこうしているうちにもう４時40分だ。窓から隣りのマンション入口を見下ろすと、いつものバイクが停まっている。眺めていると、配達員さんが出てきてバイクに飛び乗った。慌てて猫の頭が出ない程度に玄関ドアを少し開ける。みかんが間を置かずへばりつく。デルピーは最近、あまり積極的ではない。

■みかんの後ろに頭を出しても、黒猫だから背景の闇に埋もれて配達員さんには見えず、無視されるからだろうか。ゆっくり妄想的憶測の間もなく、階下でエレベーターがガコンと動き始める。身を乗り出すみかん。まだ周囲は真っ暗だ。デルピーはついにストトト…と部屋の奥に行ってしまう。私は洗面所に退避。

■玄関の隙間から、ＵＦＯ来訪の映画シーンのように光が漏れる。「…ふう、おはよう。かしこい子だねえ。」最近では無言でも雰囲気や呼吸で配達員の存在が分かるような気がする。身を潜めて聞き耳を立てるのが悪いこととは思わないけれど、自分は何をしているのだろう？…そりゃー、ただやりたいことだ。

　　　

■配達員さんが階段を下りて行き、新聞受けから少し厚めの日曜版を取り出した時、彼が昨日も今日もいつものおじさんであにること気がついた。あれ、土日なのにいつもの人ということ？配達員さんのローテーション云々は単なる私の妄想なのか？そもそもみかんはなぜ挨拶みたいなことをし続けるのだろう？

■今朝は特に外気が冷たい。未明のドアが風通しのために少しだけ開いているのもそろそろ不自然なきがしてきた。もうそろそろこのようなことは止めてもいい頃合いなのに、謎は解決しないままだ。中でも大きな謎は、なぜ自分もみかんと同時に目覚め、なぜこのようなことをしているのか？…よし、二度寝だ。

2011.10.03 Monday　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　

■午前４時40分、愚妻が「まろちゃん、時間だよ。今日はいいの？」と私を起こす。いつもは爆睡中なのに何でこの時間に起きている？と思う間もなく、慌てて飛び起きる。東側の窓から隣りのマンションを見降ろす。バイクが停まっていない。よし、まだ間に合う。押し入れの中で寝ているみかんを抱き起こす。

■みかんを抱いたまま玄関に行く。それにしてもみかんはなぜ今日は寝こけていたのだろう？目覚ましぎわのみかんはふらふらしながらそれでもドアの前にスタンバる。時間は４時44分。ふと不安になって、闇の中で新聞受けをまさぐってみる。あれ、朝刊もう来とる!!うっわー、間にあわなかったんじゃーん。

■すごすごと新聞を持って撤収する。愚妻はもう爆睡しとるし。何でさっきは起きていたのだろう？みかんが戻ってこないので戻ってみると、締め切ったままの玄関ドアにへばりついてうずくまっている。抱き上げて部屋に戻す。またストトト…と玄関に急いでスタンバる。みかんごめんよ、ごめんよみかん。

　　　

■何度抱き上げて連れ戻しても玄関先に戻るみかん。寝ていたのを起こしてしまった私のミステイクだよー、もう配達のおじさん行っちゃったんだってばよぉ〜と言っても伝わらない。やがてホアーホアーと鳴き出す始末。仕方なく玄関の床から引き剥がし台所のドアを締め切る。みかん、ドアをガリガリガリ…。

■いや本当に悪いのはおまえでなくて私なんだけれど…と思いつつ、最後の手段。ガムテープのビリリ…という音で脅す。ごめんよ、あとずさりする目の前のみかん。ごめんよ、私の頭の中の動物愛護協会。机の下でクールに一部始終を眺めていたデルピーがみかんに寄り添うと、２匹は寝室に引っ込んでいった。

■なぜ今日に限り私もみかんも目を覚まさなかったのか？それ以前に何で愚妻がこんな未明に起きていたのか？まさか今日は地震の日？配達のおじさんは閉まりっぱなしの玄関ドアを見て何と思ったのか？もう謎は増えて行くばかりである。取りあえず猫々朝日記を書いてから二度寝する私であった。


2011.10.04 Tuesday　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　

■３時30分、かなり自然に目が覚める。昨日寝過ごしたので、無意識の内に今日は取り返そうとしているのか？早すぎるので仮二度寝。４時30分、押し入れからみかんが飛び降りる音で再び目覚める。みかんは台所に。隣りのマンション入口にバイクが来る。いつもより少し早い。早速玄関ドアに隙間を開ける。

■41分、エレベーターが上昇する音。みかん、戸口の隙間でドアノブまで伸びあがって鳴く。ガーッとエレベーターが開く。「ふう〜」という軽いため息。新聞が配達される。「…んふ、おはよう、賢いねぇ」と言ってから、階段を足取り軽く駆け降りて行く音。その後、みかんと一緒に外を覗く。外気、寒っ！

■昨日は寝過ごした申し訳なさもあって、台所の頭上壁面に板を張り「猫ハイウェイ」を製作した。その先の棚の上には、去年の冬に使った布の猫ハウスを置いてみた。猫は新しいもの好き。さっそく板を渡って猫ハウスに入っていた。今朝も玄関での挨拶儀式が済むとその中に入り、現在２匹で舐め舐め合戦中。

　　　

■猫ハイウェイは昔からの懸案だった。古民家の天井の見事な梁を見る度に、猫なら喜んで渡り回るだろうなと想像していた。まずは昨日１号線の開通だ。部屋の頭上のあちこちにもさらに板を渡して猫道を増設しようと、先ずは妄想の増築中。さてせっかく早起きしたのだから今朝は銀杏拾いでもしてみるかな。


2011.10.05 Wednesday

　　　

■午前３時50分に目が覚める。また寝ると寝過ごしそうなのでトイレに立ち、居間で置時計を目の前にして横になる。棚の上に載せた猫ハウスから猫ハイウェイを伝ってみかんが降りてきた。台所のドアはまだ締め切りのまま。ドアをこじ開けようとするがやがて諦めて、私の膝の上にのって大人しくしている。

■４時35分、遠くで聞きなれたエンジン音がした。窓辺に立って隣りのマンション入口を見下ろすとバイクが停まっている。どこまで分かっているのか、みかんも窓枠に身を乗り出して見ている。取り急ぎ玄関のドアに隙間を作る。真っ暗な空間に共有灯の光が射し込んで、みかんがシルエットの黒猫になった。

■同45分。１階の門が開く音。デルピーもみかんの後ろでスタンバる。エレベーターが上昇してきて開く。配達員さんは新聞を投函すると、猫たちに話しかける。「おはよう。いい子だねえ。」今日は少ししゃがみこみ気味だったのがその声の位置から分かる。どちらかが頭を撫でられたようだ。デルピーかな？

■心なしかいつもより長居した配達員さん、階下に退場。猫２匹は悠々と居間に戻ってくる。４階の早起きなおばあちゃんの動く音がする。昨朝は銀杏並木を歩いので、真っ昼間に３時間ほど寝落ちてしまった。今日は昼の寝落ち防止のためにこれからしばし２度寝をしよう。猫たちは早くも猫ハウスで寝てる。


2011.10.06 Thursday

　

■午前３時半。なぜこの時間に目が覚める？とうとう老人か？いや、みかんも共に目が覚めるから、ある意味超常現象？１時間以上、居間でスタンバイのための２次的スタン.バイ、ウィズ２猫だ。４時45分。隣りのマンション入口に停まっているのは良く見るとバイクでなくスクーターだ。あれ、今日は別人さんなのかな？

■４時49分。エレベーターが開き、新聞が投函される。デルピーは要領よくみかんの背後に忍び寄る。「おはよ、賢いね」と声がする。あ、いつものおじさんだ。今日は遅れ気味だからか急ぎ足で退出。猫２匹、よし、今日もやった！みたいな顔をしてぴったり並んでリビングに。こいつら一体どういうつもり？

■最近はよく５時前に居間で配達直後に新聞を開く。お約束のようにデルピーがその上に乗る。近頃は上手く真ん中に乗るように紙面を微調整して、左右から覗き読む技術を磨いている。みかん接近。手を伸ばして頭を撫でようとすると、呼応するように下からグインと頭を突き上げるあの感触が好き。外は暗い。


2011.10.07 Friday

　　　

■午前３時半に猫と共に目覚め、居間で半覚半睡状態の後、４時44分に新聞配達人と猫２匹のドア越しの遭遇をフォローする。今日の挨拶は「おはよう、可愛いね」だった。即撤収して２度寝の１人と２匹。やがて来る季節限界をさて置けば、ほぼ同じルーティーンに安定してきた。取りあえず新聞を居間で読む。

■中日ドラゴンズが勝ち、ヤクルトスワローズが負けたため、ドラゴンズが５月以来の首位に立つという記事。実は私は昨夜、愚妻に強引に誘われてその現場、つまり名古屋ドームに居たのだ。５階席当日券は2500円。上からの視点は新鮮だった。そしてスティーブ・ジョブス他界のニュースで、世間は沸騰中。

■ひと眠りして目覚めてもまだ７時前。ほぼ老人タイム感覚？ふた眠りに入る。そして８時過ぎ、今年の新作秋ものコレクション子猫の声で目が覚める。ありていに言えば今秋に生まれた仔猫の初鳴きだ。ベランダの眼下にある平屋の敷地で、近所の野良猫が春と秋に仔猫を産む。猫々的日記では大ニュースだ。

　　　

■あの一番キャッチィな周波数帯で声を限りに止むことなく鳴き続ける声。鳴いているのは１匹だけ。小学生の雨の日の朝、広い空地で仔猫が鳴いていた。私は拾い上げようとして水溜まりに落としてしまった。遅刻するので後ろ髪を引かれる思いでそのまま登校した。当時から髪は長めだった私ではあるけれど。

■子猫は体温が下がると親猫を求めて大声で鳴き続けるということをずっと後で知った。それを知ってから、あの空き地の仔猫の鳴き声が頭から離れない。眼前の生き残れる可能性のある猫には１匹でも多く手を貸したいトラウマ。さて窓外で初鳴きの仔猫。この世界へのデビューおめでとう。多幸を予祝する。


2011.10.08 Saturday

　　　

■１時間前から起きて、いつものように４時45分を迎えようとする。しかしエレベーターが開く６秒前、日和っているように見えたデルピーを抱き上げて、玄関のたたきに放り投げたら、振り向いたみかんがデルピーの鼻面に軽くパンチ！デルピー、居間まで猛烈なダッシュ。それを猛然と追いかけて行くみかん。

■ちょ、ちょう待て、待ってくれ！もう配達員の人が…。新聞投函の音。玄関の外から漏れ入る光を台所から見ると、少し中を覗き込んでいたようにも見えた。しかしそれもほんのわずかの時間で、すぐにお隣に新聞を配達すると無言のまま階段を下りて行ってしまった。えーっ、60分待って６秒差でパーなの？

■猫々朝日記。なんでー？私がデルピーに無理強いしたから？独占しようとしたみかんがそれを撃退・追走？そんなパターンあり？呆然としつつ居間に戻ると、２匹は机の下でなんかまったりしている。遠く走り去るバイクの音。やがて沈黙。脱力感に捕われ始めた私は、夕べの仔猫を思い出して耳を澄ました。

　　　

■昨夜帰宅する、昼間から聞こえ始めた仔猫の鳴き声が、かなり絶叫にトーンで続いていた。５階のベランダから地上を見てみるが、暗闇と木々の中で分からなかった。正面下には駐車場があり、それをプロック塀がぐるりと取り囲んでいる。あまりに長く鳴き続けているので、ライトを持って行ってみた。

■駐車場の中を鳴き声がこだまして位置がいまひとつ分からない。停めてある車の下を覗くがいない。車上狙いに見間違えられそうなので撤収した。また鳴き始める声。部屋に戻っても気になって野球もサッカーも見られない。以後も何度か駐車場に探しに行ったが、塀の裏を移動する鳴き声の本体は視認できず。

■最後の捜索は今朝の午前１時過ぎだった。ライトでそーっと塀の裏を探すが、近づいていくとその命がけのヘルプ信号を出す小生命体は鳴くのをぴたりと止めてしまう。数分後にまた鳴き出して猫好き男の胸を切り裂く。駐車場の隅で息を潜める私も客観的には単なる不審者だ。最終的に眠くて撤収を選択した。

■そしてわずか３時間半後の今朝。あの鳴き声はもう聞こえなかった。昨日はベランダから覗き下ろす度に、当家の猫どもも手摺りの隙間から首を突き出して見ていたのだけれど。母猫に会えたのか、力尽きたのか、寝ているのか…。２度寝した後、明るい日差しの下でも声はしない。…さて明日はどんな展開になるのか？


2011.10.09 Sunday

　　　

■日曜版が少し重めなのか、今朝は少しだけ遅れて朝刊が来る。今日もぬかりなくみかんとデルピーが時間前に玄関の隙間にスタンバイ。しかしエレベーターが４階まで来た時、突然みかんが居間方面にダッシュ。おい、連日の超ドタキャンかよ！追って行くが間に合わず。玄関ではデルピーが少し下がって立つ。

■「………」おじさんがデルピーに何か言っていたようだが良く聞こえなかった。闇の中の黒猫だけれど、目玉だけでも認識してもらえたのか？私は連日の３時半起きで蓄積疲労気味。みかん、明日もドタキャンなら、もうそろそろ潮時だぞ。今日はベランダの里芋プランターを１つ試しに掘っ繰り返してみよう。

■どうでもいいことながら、ＣＭの”Ｉt’s a Sony”というキャッチコピーがあるが、最近どうしてもそれが「痛そうに」と聞こえる。以前は批判的なイントネーションの「偉そうに！」という日本語が脳内に並走していたのだけれど、近頃は「痛そうに」が聴覚器官に感染中。個人的な脳内ジョブズ効果か？


2011.10.10 Monday

　　　

■夜っぴいてみかんが大声で鳴いて眠れない。愚妻が居間を明るくして遅くまで起きているからだ。「マンションを追い出されてしまうから猫を鳴かすな」と言うが、愚妻の耳は驢馬の耳なので念仏も聖書もコーランすらも届かない。３時半に愚妻を無理矢理床に就かせると、猫達も棚の上で眠り始めてしまった。

■床に入らず、居間で胡坐をかいた状態でうつらうつらしているうちに４時半が過ぎ、隣りのマンションに新聞配達のバイクが来ている。急いで玄関ドアに隙間を作ると、みかんがＴＶの上の本棚から降りてきた。デルピーは棚上の猫ハウスから身を乗り出すが出てこない。みかんは抑えの効かない闘牛状態。

■エレベーターから出てきた配達員さんの声。「おはよう、賢いねぇ。」しゃがみこんでみかんの顔を見るのが、漏れこむ光の動きで分かる。珍しく走り去る配達員さんの後ろ姿を見続けているみかん。新聞を開いて読んでいるつもりが、気がつくと猫と共に居間で寝落ちしていた。寒いので猫添い寝してくれてんのかよ。