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■１■午前３時前に目が覚める。外は雨だ。知っている。天気予報で朝の８時頃まで止まない。何かしんどい。今日こそはお休みでいいんじゃないか？山に登る時、天候や健康の状態で敢えて断念する勇気というものもある。ベッドに横たわる。２度寝しよう。今日は休もう。少しだけ気を失う。雨が強くなる。

■２■ベッドの下で猫が鳴く。いつもはこの時間にいないからか、やたらと鳴く。心配してるのか？仕方なく体を起こす。普段ならそろそろ歩き終わって帰宅の時間だ。三宅一生というファッションデザイナーがいた。「どう生きても一生」というフレーズが頭に浮かぶ。どう生きても１時間。寝ていた１時間。

■３■心も体も「私」は休もうとしているのに、何かが支度して準備運動を始めさせている。運命でもなく憑依でもなく、確実に「私」を方向付けている何か。多分「未私」。１時間遅れで出発だ。雨なので傘をさす。今日は昭和区を一回り。塩付通り→八熊通り→空港線→山王通りと長方形のコースを選択だ。

■４■ゴーゴーと言う音がする。マンホールの下からだ。降った雨が下水道を流れている音だ。初めて聞いた。風が強くて、傘を差しにくい。ゆっくりスマホ撮影などできない。下半身が濡れてもいいように、今日はＧパンを着用だ。｢雨にも負けず、風にも負けず｣は勝つのではなく左右されずの意なのだろう。

■５■垂れこめた雨雲が街の灯りを反射して空が明るい。だが決して夜明けではない。怪談『牡丹灯籠』を思い出す。良い仲になった相手が幽霊だと知り、男は修験者のお札を貼って朝まで家に籠る。しかし偽りの鶏の声を聞いて朝になったと騙され、外に出てて死んでしまうのだ。それでも雨に煙る街角たち。

■６■走らなければ膝も背筋も特に問題はない。今日のテーマは粛々と歩く｡３時台と４時台であまり区別がつかない。雨なので猫も出で来ない。身も心も動いているのは｢私｣なのだが、それを引っ張って行かれる方向が未来なのだ。未知を怖れ不安がらせる現今の世情操作に拘わらず、未知を信頼し続ける。

■７■大きな袋をたくさん積んだ自転車がフラフラと通る。アルミ缶が一杯詰まっている。水たまりに映る街灯と雨粒の反射が、線香花火のように弾けて見える。ゴミ収集車も､消防署も､パトカーも､物流の運搬車も､みんな本当に有難う。御器所に戻ってきても、まだ地下鉄は閉まったままだ。夜の雨も美しい。

■８■水平線までの距離は目線1.5ｍで約4.4kmだ。人間は徒歩１時間でそこまでは進める。地球周長は４万kmだから１年365日不眠で歩けば、ちょうど地球を１周する距離に等しい。ただ「歩く」という自明な動きが、地球と我々人間の根本的な関係の１つとしてあるわけだ。多分「それ」も私を歩かせている。

20241028 Monday