■１■数の数え上げや計算などの地味で時間がかかる作業をしていると、時々過去の身体及び脳全体のホログラフィックな感覚記憶が静かな至福感を伴ってやって来ることがある。この何とも言えないただ生きて来たことの記憶の恩寵を、頭を実際に回転させずに振り返ると、それはいつもすぐそこの裏にある。
■２■昔はこの幸せな感じを明確に抱きしめようとして、かえって強く抱え過ぎると飛び去ってしまうタンポポの綿毛のように霧散させてばかりいた気がする。それは単なる現在の自覚意識顕在意識の波頭だけで操作したり精査したり、満喫するものではないということが、それとなく分かるようになってきた。
■３■ベランダの外をふと見ると、陽光の中をはらはらと雪が舞っている。逆光の中の風花は綺麗だ。作業に一区切りつけてからじっくり見ようと窓辺に向かったら、雲がずれたか気温が変わったのか、もう大気の中に雪片は飛んではいなかった。自我を否定も肥大化するでもなく、分と機を弁えるという発想。
■４■血流や脳内に生成される化学物質によって、揺り動かされる類の普通の感情とはまた別に、静かな知性や記憶や意識の姿勢によって保持される、通奏低音的な励起状態の感情というものもある。静かな至福感は繊細に意識の辺縁で辿りつつも、今自分が成すべきことをしっかりやり続けることで持続する。
■５■猫の毛先に触れるか触れない程度に撫でる感覚を知らない人は、猫にまさに毛嫌いされることにある。触れることで触れられ、撫でることで撫でられているという、あの微細な感覚を猫は教えてくれる。怒りではち切れそうな時猫は近付かない。刻々変わる猫の目に、自分の中の何が見て取れるのだろう。
爺ぃだからと居直って、素っ頓狂なことやおためごかしな口調で語るとばかりは限らない。爺ぃの語りは騙りばかりだとも限らない。爺ぃの心境の一部脳内失禁がだらけとは限らない。
…あ、でもやっぱり失禁だからNEWでなく尿臭いかもしれない。肉体的な知覚器官としての匂いでない、形而上学的とも表現できる匂いもある。それを知覚器官と同じところで感受するんだけれどね（←相変わらずだけれど、何言ってんの？／笑）。
爺ぃの恍惚が即、高濃度痴呆とは限らないと主張して見たかったんだけれど、それすらも地方のなせるワザかもと思えてきたら、なんかそんなことどうでもいいことに思えてきた(笑)。全て消し去ってそこに残るものが一番大事かも。
2022.12.20
Tuesday
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