■１■湘南と呼ばれる海辺の町から、名古屋に引っ越してからもう20年以上が経つ。その間に空き地や家の庭からどんどん土が消えて行った。大地は駐車場や無機質なスペースとしてコンクリートで蓋をされ続けてきた。蝉は地上に出られず、雑草はコンクリートの隙間から芽を出すがそれすら除草剤まみれだ。
■２■近年のマスクで素顔と表情を隠し、そこから溢れ出る人々の健全な知性と情緒の発露が蓋をされ、それらのエネルギーがどんどん空間から削り取られている。これらのことと、町中から自然な大地や草木が削られ続けてきたことは全くの別事でなく、むしろほぼ同じ出来事であることに先ほど気がづいた。
■３■誰か特定の個人が為したり、集団で謀議しているだけのことではない。陰謀的操作をしているつもりの権力者の類がいたとしても、それすらも呑み込んだより大きな自然の流れが変わってきているのではないか。自覚なく精一杯生きている人たちを否定したり哀れんだりする者すらその流れの只中にいる。
■４■「人口削減計画に中で、長期に渡る洗脳の果てに、我々は無力だ。絶望だ。自然が人間社会と乖離していく。消えていく。地球は終わりだ。」…ちょっと待て。私たち個々人の身体もまた自然であり、その内も外もまだ生命に溢れている。どんな社会や環境であろうとも、自然は自然に生命を展開しうる。
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■５■無思考のまま被害者面して他者や他物を非難しても、諦念か暴力的解決に向かうしかない。それは古臭すぎる遺跡的リアクションだ。完全に意識がやられてしまう前に、自然から人間社会に閉じこもった自閉症的現状を自らの内と外に顧みられるなら。この身体の内にある自然を宇宙を生命を凝視しよう。
■６■呼吸出来て、身体を動かせて、声を出せて、色々感じたり考えたりできる自分がまだいると確認できるなら、ゾンビや妖怪が徘徊するような劣悪に見える街の中でもまだ身も心も自由だと分かるならば、そこでも自然に則り自由に生きよう。それでも力尽き死ぬのであれば、笑って自然に還れるだろう。 |
2022.11.12 Saturday
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