#011　「反転」について考えてみる（２）

■１■「反転」という言葉を耳にしても、様々な領域で異なる語義を持つ。普通の言葉の
意味としての反転でも位置・方向・順序などが反対になること、もしくは反対にすること
であり、また陰を陽に、ネガをポジにすることでもあり、服や袋を表裏ひっくり返すのも
反転だ。化学での立体配置の反転もある。

■２■心理学におけるゲシュタルト療法でも、意識の前面にある関心事である「図」ばか
りを見ていたのもが、意識していなかった背景としての「地」に気付く時の図地反転とい
うものもある。ヌーソロジーが言う人間型ゲシュタルトから外に出て、それまで見えなか
ったものが見えてくる意識の反転もあろう。

■３■ニューハーフが女になるための造膣手術というものがある。肛門の少し上に穴をあ
け、その内側に陰茎の皮をひっくり返して縫い付ける。亀頭はクリトリスとして再利用す
るという。あの映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で主人公がやった手術で
ある。その術法は「陰茎反転法」という。

■４■今日び、ソフトを使えばパソコンでも簡単に左右の反転や上下の反転、ネガポジ反
転から色彩の反転、果ては極座標と直交座標の反転の操作までができる。要するに様々な
次元における対称性を有するものの一方からもう一方に、またその逆の操作をもひっくる
めて、私たちは反転と呼んでいるのである。

■５■例えばテニスボールの球を表裏反転させるのは、この３次元世界の中では不可能だ
。しかし手袋を脱いでひっくり返すのは可能である。前者の反転の喩えとして後者を用い
るのは、そこに混乱がなければ有益である。しかし聞く方がそれらを混同して納得したつ
もりになるのは、喩える側に落ち度がある。

■６■言葉と表現の問題でもある。すでに高次のことを理解した者が、理解以前の感覚を
そのまま覚えていることは案外ない。そこで通常の人間であれば共通言語的に認識できる
「幾何学」的表現が使い勝手が良いと考えられている。簡単な丸や直線を使った関係だけ
で反転の概念を少しでも共有できれば良い。

2015.01.20 Tuesday

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