#288 ありがとう、もものすけ

■１■本日の午後に黒猫のもものすけが他界した。愚妻が岐阜に仕事に行く途中、電話で
知らせてくれた。最後は猫病院で酸素吸入をしていた。入退院を繰り返していたが、私は
病院に送り出す前に、いつ会えなくなっても良い心構えをしていた。愚妻はできる限りの
ことをした。共に思い残すことはない。

■２■悲しいとか辛いということはないので、過剰な心遣いやお悔やみはご遠慮したい。
理性や意識では特に何の心残りもやり残しもない。しかしそれでも人間をやっているので
、無意識の深いあたりで何か湧き立つものがある。言葉や概念にならぬそれを、私はあの
黒猫に対する深い感謝に変換しつつある。

　　　

■３■そもそももものすけが当家にやって来たのは１年と少し前のことだ。それにはちょ
っとロングストーリーがある。2003年に京都から生後28日の、黒猫とキジトラ白の兄妹仔
猫をもらってきた。そして10年間その２匹と生活をした。そして去年の夏、私の不注意か
ら兄の黒猫のデルピーがいなくなった。

■４■１ヶ月近く毎日デルピーを探した。体重が５キロほど落ちた。ある日近所で黒猫を
発見した。ご近所の猫好きも巻き込んで、様々な苦労の末、それを捕獲して家に連れ込ん
だ。痩せこけた黒猫は押し入れに隠れてほとんど出てこない。１ヶ月野良生活で苦労した
のだと思っていた。実は別の野良猫だった。

　　　　　　　

■５■だがせっかくの縁だからと飼うことにした。残ったキジトラ白のみかんは何が起こ
っているのか分からないままだった。さらに１ヵ月後、病院にデルピーの失せ猫情報依頼
の張り紙を見て、事故で動けない黒猫を保護しているがお宅のでは？という連絡があった
。飛んで行き、毛布巻きのまま入院させた。

■６■退院して当家に連れて来た。この黒猫もデルピーではなかった。こやつもご縁と当
家で面倒をみることにした。先の黒猫をコデル、後の黒猫をオオデルと呼んでいたが、や
がて「うめたろう」と「もものすけ」と名付けた。どちらも白血病＆猫エイズ陽性だった
。何度も死にかけては入退院を繰り返した。

　　　　　　　

■７■そうこうしているうちに義母が突然他界して、飼い猫４匹が残された。空間的に無
理なので別の古いマンションを借り、猫々ハウスと名付けたところで面倒見ることにした
。もものすけだけはキャリアに入れて、そのハウスに２度ほど連れて行ったことがある。
数日間、もものすけとずっと一緒にいた。

■８■猫は一匹残らず愛していると公言して憚らない私だが、もものすけに対してもそれ
は変わらない。もものすけといつ会えなくなっても後悔しないように過ごしたので、何も
思い残すことはない。言葉の届かぬ深いところから、ただ感謝と表現したい何かが湧いて
くる。これを反転して生きる力とすること。

■９■繰り返すが全ての猫を愛している。１匹たりとも例外はない。いつもそれを人間に
も当てはめられるようにして生きたいと思っている。未だそれは叶わないけれど。思い出
すたびに言葉の届かぬあたりから湧きあがってくるものを「感謝」と捉えて、巡り合い触
れ合うもの全てに対して放射していきたい。

　　　

■０■ありがとう、もものすけ。おまえと一緒の時間を過ごせて、本当によかった。おま
えのことは決して忘れないよ。お前と私はもう二而不二だから。

2014.12.14 Sunday

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