#222　金だけ、今だけ、自分だけ

■１■古来よりのユダヤ商法的経済の発想は、時間の経過に価値を置いて「利子」を設けるというものだった。一定の時間が経過すると、その経過分の利子を契約書に照らし合わせて合法的に徴収する。その法の是非については言及することは避けるが、汗水たらして労働する類とは全く別物の金儲けであった。

■２■近今の金融商法は時間の「過去」ではなく「未来」にまで手を伸ばしてその利益を「今」受け取るという、生命時間とは真逆の狂った考え方に基づいている。いわゆる「金融工学」と称する高等数学と経済理論に基づく空虚な博打の取引をやり合って、膨大な手数料を手に入れてきた邪悪な連中の所業だ。

■３■保険業の最先端は地獄に足を突っ込んで久しい。普通の生命保険は死んだら家族が保険金を受け取る。まあ世間一般では自明のことだ。ところが最近は複雑な金融商品となって保険金の受取人が見えないものが多々ある。知らぬ間に保険金を掛けられ、その人が死ぬと無関係な者に大金が入るシステムだ。

　　　

■４■ギリシアは人口わずか１１００万人の小国だ。６割が公務員という勤勉でないこの国の民をなぜ自分たちが身を削って支えなければならないのだと言うＥＵ各国民の心情は良く分かる。そのギリシア国債の総残高は３５兆円。これくらいなら各国がどうにか援助して支えられるのに、なぜ世界中で騒ぐのか。

■５■国がデフォルトすると、つまりその国が死ぬと「死亡保険金」１００兆円を払わねばならないシステムが絡みついており、さらに多くの国債や証券を組み合わせた金融商品が２００兆円存在するようだ。ギリシア破綻で得する者もいる。リーマンショックの時もこの構造は存在した。見えない邪悪な存在ども。

■６■原爆を初めて爆発させる時、もし世界中に核連鎖反応が広がったらどうするのかという危惧はあっただろう。今現在も隠蔽体質の原発施設は、世界中に刻々と制御し切れぬ放射能を巻き散らかしている。金融も然りだ。ただし今度の経済はゲームをしているつもりの者も金融放射能に汚染されて果てるのだ。

　　　

■７■高価極まりないコンピュータとプログラムを駆使して、人間の認識や判断ではとうてい追いつけない毎秒何千回何万回という超高速で株や金利をやり取りできる者が総取りしている現状。誰よりも早く儲けを自らの手元に集めるという強欲さが、機械に経済を主導させ、世界ごとクラッシュさせてしまった。

■８■幸い金融システムに深く根ざしていない者に被害は多くはないだろう。もちろん国や社会や周囲の人たちにも猛烈な金融核爆裂の爆風は及ぶので、自分は無関係と知らぬふりしては生きてはいけない。自分自身の生命時間を如何にして他者と共に真正に過ごすのかを考えるいい機会である。最後の機会だが。

2011.12.02 Friday