#366　懐かしい名を耳にして

■秋のお彼岸テラバイトの最中にfreeliver氏と話をしていて、懐かしい名前を耳にした。岩城和平という名前だ。氏の名前は覚えていても、苗字の方は失念していた。彼と会ったのはハレー水星が到来する以前だったから、1986年より前ということになる。彼はこの彗星には神が乗っていて、地球に平和をもたらすべくやって来るという類のことを話していた。またインドに行って平和のためにお寺を建てたいとも言っていた。

■当時の彼は多分若干20歳。私も30歳を越えたくらいの歳勘定になる。井の頭公園駅前でわずか２〜３度会っただけなのだが、それでもいろいろと記憶している。私個人もまた前世紀はもはや前世と公言して余り言及しない様にしているが、少しだけ個人的な記憶失禁をしてみよう。公園駅は井の頭線で吉祥寺から１つ目にあり、駅前通りにはセレスティーヌというお店があった。そこに友人の半田コーセン氏がバイトしていた。

■お客で和平君の友人だった青年を通して、若き半田コーセン氏と岩城和平氏は会った。私も何度かその場に居合わせたが、私の部屋で何人かと共に話をしたこともあったと記憶している。まだ高校生のような顔をした和平君は肩にかかる長髪で、右の首筋にはさらに手の平ほど長いひと房の髪が垂れていた。私はそれを見て、「あ、宇宙と交信するアンテナだ」と無邪気にも思ったものだ。一方の半田氏はまさにその交信が始まっていた。

　　　

■作詞作曲から曲のアレンジまで全て自分達で創るデュオとして、レコード会社でデビュー直前までいっていた彼は、博多の実家に母危篤の報を受けて帰省し、奇跡的に回復したその理由を知るに付け、通常とは異なる意識モードに突入しつつ、再び東京に戻って来ていたのだった。和平君とは何度か尋常ならざる話をしていたのだが、自分にもかかわることなのでここではその詳細は失念したということで語らない。

■スマルという邪悪な謎の存在形態のようなものについて考えていて、スマルスマルスマル…と繰り返していて、マルスとなることに気付いてはっとして、火星…のこと？などと顔を見合わせたりもした。半田氏は現在は「前世はない」と公言してやまないが、当時は前世について個別に見えていたらしく、和平君との前世の縁についても語っていたようだ。和平君は物静かで、毎日部屋で瞑想ばかりしていたようだ。

■半田氏の実家は平和町にあった。私は２人を左右に見つつ、勝手に何らかの対称性を見たつもりだった。井の頭線沿線に住んでいた和平君に公園駅まで遊びにおいでよと電話をした時、彼はお金を持たないから行けないと答えたことを記憶している。公園駅の改札口で行き帰りのお金を渡すからおいでよと言って無理に来てもらったのだが、お金がなくても生きていけるのだとその時初めて思ったものだ。新鮮だった。

　　　

■freeliver氏に教えてもらってネット上の彼のＨＰなどを見せてもらった。約8000日ぶりに見た彼の画像は、優しそうな眼差しが昔の彼を彷彿とさせたが、当然の如く繊細至極な青少年ではすでになかった。今は年齢も20年以上重ねて立派な人物となっているので、和平「君」という表現はせずに今後は和平氏と呼ぼうと思うが、いつか作為的にではなく半田氏と共にどこかで会えたら面白いものだと思う。人生は面白い。

■ただわれ生き様を持って答と成す…である。答になっていないというのが答かも知れない。衒学的表現に落ち込んではいないということだけをここでは表明するのが、私なりの誠意の表れということでご笑納いただければ、存外の幸せなりきこの緑なす星…である。

2007.10.13 Saturday