#291　■後拾遺集…１人を愛することで全てを愛する

　　　　　１人を愛することで全てを愛する

■以前のブログで、20歳の頃、自分個人では物理的にも精神的にも地上の全ての女性を現実的に愛するということができないという事実に思い至って愕然としたということを書いたことがあるけれど、そのショックから後日どのように立ち直ったかについては何も書かなかった。しかし無為のまま過ごしても、時は何も解決してはくれない。ただ恩寵として記憶に伴う苦痛への麻痺と忘却を与えてはくれるけれど。

■人間としての現実的に乗り凝るということ。たとえある短期間であるとしても、１人の異性を心から愛しているという自覚を持ったまま時を共に過ごしたことがあるならば、その１人の女性を通して全ての女性と女性性を愛することが可能であると知ることができるのではないだろうか。これはメタフィジカルな色合いを帯びはするけれど、決して単なる文学的表現に留まりはしない本質的なものいいである。

■私個人のことで言えば、その時の至高体験のようなものはこの今現在は心身の中には残っていないけれど、それを経験したという記憶だけは残っている。その記憶自体も時と共に変化してしまうことは心得ているけれど、それでもその記憶が変質していく記憶が消滅する前に、その本質的なところが外的内的経験によって純化され確固たる生き様の核となりゆくことへの妨げにはならないと言うことも知っている。

　　　

■安易に言葉にすると全てを流してしまうけれど、それでも言葉にならないものたちを言語化して確定することなく、記憶の素肌上の掻き疵ほどのものとして仄めかし程度に記しておかねばならないだろう。そうでなくても私は多くのことを忘れ、多くのことを忘れたことすらも忘れているのだから。愛するの語義はまた別の話として、１人すらも愛せないということは自分すらも愛せないということに通じる。

　　　　　『Bleach』私見…命のつながり

■居合わせた者としての友情や協力を超えた関係として、互いに命を救い与えられた者同士のつながりである。１人だけではすでに生きていないということを肯定的に捉えて、今度は自分が身命を賭して相手を助けるべく行動する者同士の信頼関係は、その想いの純粋性は、このチームを１つのメタな生命体の様に思わせしめる。仁義や人徳や忠義等といった美談や概念を持ち出すこともなく示してくれている。久保帯人独自の世界観と趣味も日本的でクールである。

2007.05.03 Thursday