#169　無意識に数を数えるということ

■小学５年生の時、先生がクラス全員に眼を閉じさせて、頭の中で１分がたったと思ったら目を開けなさいと言った。声を出さずに頭の中で60秒を数えたのだが、ほとんど全員が１分より早く目を開けた。子供の１秒は大人より早い。その中でただ１人ぴったりの生徒がいた。彼女はピアノを習っていて、絶対音感だけでなく、頭の中で絶対リズムを刻むメトロノームがあり、１分60回で動かす事が出来たのである。

■神聖幾何学的絵を描く画家でもある友人のドラマーが、右手で２拍子左手で３拍子を取る練習を続けていた。彼は長い訓練の末、四肢それぞれで別個のリズムを取れるようになっていた。彼は右手で四角を左手で丸を空中に描けというワークをたやすくクリアーできた。意識的に右脳と左脳を使い分けると楽だと言った。ただし丸と四角を逆の手で書くのは、少し脳内の操作をし直す必要があるらしい。

■彼は自分のバンドとアドリブでプレイするとぴったり息が合うのに、スティックで１，２，３，４とリズムを取ってから演奏を開始すると、全員のリズムが微妙にずれるのに気がついていた。それぞれの楽器の入力から立ち上がりまでのほんの僅かな時間差を差し引いても、そこには微細なリズムのずれが微妙な不快感として残る。アドリブから何とか曲のスタート時点を合わせればそれは決してずれないらしい。

■インベーダーゲームの出始めの頃、名古屋撃ちと称するものがあった。決まった数ごとに出てくる画面奥のＵＦＯを撃墜すると高得点が選られるのだ。習得してくるうちに無意識に数を数えていている自分がいることに気がづいた。かつて建物の窓の数や古代美術品の首輪の宝石の数など、視野の中で興味をひくものを構成している数を無意識に数える癖がある自分を知った。気がづくとすでにその数が分かるのだ。

■ファインマンは本を読んだり他のことをしながら、頭の中で数を数えられることに気づいた。彼の場合は60まで数えるのに48秒だった。実際に数え終えた後、同時に読んでいた本のあらすじもちゃんと言えた。人間は脳の２つの半球を２つの仕事に分担することが出来るのだ。みなが48秒ではなく、その時間には個人的な固定値があるらしい。この差はマヤの世界観にある生来のトーンと関係があるかもしれない。

■マヤの13のトーン。これは１日ごとに１つずつ増えていき、14日目にはまた１に戻るという一見単純なサイクルである。これを個々人の実際の誕生日で１から13のうちのどれかのトーンに同定して人間関係で見ると、１−５−９−13，２−６−10，３−７−11，４−８−12という各トーングループ（パルサーコードと言う）同士では無意識的にも精神的に協和するのが実感できる。だがその裏にある法則とは何か。

■そこで始めて「それではこの１，２，３，４…という数は何だろう？そして13で１サイクルとなる周期とはなんだろう？」という設問に取り掛かれるのだ。自分の中に刻まれている数に気づき、無意識の内に様々なものを数えている自分に気づくということ。それもなく「数こそがすべてである」などと言っても、それは数の影への言明である。数えるということは生命と共にある。生命がなければ、数もない。

非・人非人日記(７)rewritten & replaced

2006.08.03 Thursday