#123　マヤの性 現代の性を 共に超え

■現代社会において「殺人」と「売春行為」がなぜ問題なのか、誰も説得力のある説明をてしくれない。性を経済の中で商品化し、それを日々煽るメディア。それに対する性教育の授業は義務教育の中では数時間しかない。相談に乗ってくれる稀な友人知人もまた歪んだ性知識に踊らされ、それが大人の世界、それが現代社会だと丸め込まれる。お金や見得や快楽や憂さ晴らしではなく何のために性行為をなすのか。

■マヤ語で性行為はPACLAMと言う。PACは「観察すること」、LAMは「永遠の」という意味だそうだ。つまりマヤでは性行為とは「永遠なるものを観察する事」なのだ。視座は最低でも２つと言ってきた。マヤの性に関する世界観を見ていくことで、現代の状況を考え直すことができるかもしれないので、幾つか紹介してみよう。まず性教育だが、７年単位で大きく区切られている。最初の７年は両親から教育を受ける。

■次の７年は息子は父から、娘は母から、親がいない子は伯父伯母から教育を受けていた。また学校でも性教育を含んだ一般教育を与えられていた。14歳でイニシエーションを介して詳しい性理論や正しい知識を受け、少女は結婚が可能となる。男子は全員がさらに性理論を学び、17歳から１年間実践的教育を尼僧から受けて、18歳には結婚の準備が整うことになる。マヤにとって睾丸と卵巣は人体の中の銀河なのだ。

■少女の方は14歳以降は性教育の尼僧になる希望者のみ、さらに３年間の詳しい性理論を受けることができ、やはり17歳で性の実践的教育を１年間受けた後に18歳から性教育専門の尼僧の職に就くことができた。21歳までは性教育者としてのワークに従事し、さらに28歳まで自分の生徒である少年に教育を授けることができた。その後は性教育の評議会員になるため、生徒との性行為は一切行わなかったのである。

　　　

■性教育の実践では尼僧は様々な体位や射精の方法、バースコントロールのための呼吸法、さらには性行為中にプラナエネルギーを与える方法や、身体の７つのエネルギーセンターにどのような感覚で移動するかなどを、伝統と宇宙的法則に基づいた内容で伝えていた。少年少女が僧侶職に就くには好きなら誰でもというわけではなく、評議会でその才能が話し合われ、またカレンダーによって適不適を判断された。

■性行為はマヤでは神フナブ・クから与えられた神聖なものであり、フナブ・クと結合するためのものだった。性行為の過程にはフナブ・クによって決められた神聖な法則があると考えられていて、社会秩序に欠かせないものだった。現代社会における性的諸事情を鑑みるに、性そのものに対する敬意と真摯さ、そして異性を介した神との合一や、性的機能の差異にも関わらぬ男女平等などは学ぶべきところが多い。

■さて私は決して契約的な一夫一婦制の肯定者ではなく、またその破壊者でもない。もちろんマヤ礼賛者でもない。マヤ的な性に関する世界観が現代に比べていかに進んでいるように思われても、私がその社会の構成員であったら、その世界観をはみ出すためにそれを破壊していたかもしれない。問題は現代から再度省みることによって、現代のみでも当時だけでもない新しい世界観構築の可能性があるということだ。

■女性の尼僧が少年達に性の実践を教えるということは、明らかに売春や多淫とは区別されるべき神聖なものとして扱われたであろう。王族やサッカーによく似た競技の勝者は喜んでその命を神に捧げたという心情も少しは垣間見られるかもしれない。現代社会に埋もれるでなく、過去の神聖なるエネルギーワーク的世界観に自分を投射するだけでなく、さらなる新しい世界観を構築し生き抜いていくべきなのだ。

2006.06.18 Sunday