#084　触れ合うや 時空を超えて 我と我

■友人の甲田氏が先日、遠隔ヒーリングというものをしてもらっていた。彼の父上が亡くなる前に、無断での遠隔ヒーリングは御免蒙りたいと語っていたそうなので、てっきり彼もその手のものは遠のけているのかと思いきや、能動的に依頼して自らの心身を通して人体実験したようだ。トランスパーソナルな領域の探求という彼のテーマもあり、事後のコメントもちゃんと表明しているので、なるほどと納得できる。

■私ははなから「そのようなものはあっても別に構わないが、私個人的には不要である」と宣言することによって、自信のある自らの健康度を強調し、最初から関与したり考察したりすることが無かった。しかし個人と個人を超えたものとの間に生起する事象を考察する場合、この遠隔ヒーリングのみを無視するわけにはいくまい。そこで早々に体験している甲田氏の脳内外の行動力と決断力に改めて感心してしまう。

■彼の興味に妖怪というものがある。虚と実、意識と無意識、日常と非日常のあわいに立ち上がる内的外的事象を人間側から見て解釈したものとして解することもできよう。全てを一からげにして論ずるのは乱暴だが、ヒーリング、テレパシー、リモートビューイング、シンクロニシテイ、予知、サイコメトリー等も、このあわいのトワイライト…界面、膜、境界、閾域で生起し、機能しているのではないだろうか。

■いやもう少し正確に言えば、内面と外面、意識と無意識のあわいにある境界の定かならぬ領域こそが私たちの意識であると表現することもできる。内と外はリバーシブルだが、その干渉ゾーン。３次元的イメージではそれはいくばくかの幅や厚みを持つ空間領域であると感じられるが、トポロジカルな表現をすればそれは厚みのないすただの面なのだ。そこから意識の触手を伸ばす方向によって世界観ができる。

　　　

■ではヒーリング等が機能しており、妖怪たちが跋扈する領域と、私たちの意識の領域とは重なっているので同じものなのか。まあそもそもの表現自体が３次元的なのだが、それを外すと話がややこしくなるのでメタファー込みで話を進めたい。界面そのものが意識の場であるとすれば、超個人的諸事象が立ち上がるのは、メビウスの輪的な意味でのその裏側…。反転とか自分の影と表現しても言葉だけでは難しい。

■ところで甲田氏のコメントを読んで感じたこと。指定時間にそのようなものを受容する意識姿勢をとるだけで、すでに普段とは異なる微細感覚と感受性が自らの意識と身体感覚の方向に向いているわけで、普段とは異なる主観体験はあるだろう。自らの発した無意識的思考が即時にフィードバックされて意識域に上ることもあろう。アフォメーションの有無の差もある。今後彼に確認して欲しいのはその先である。

■癒しを発している者を意識することはできるだろう。さらにそれを超えて、あらゆるものとことにこちらから逆探査して、いつでも何処でもキャッチできるという境域へ至ることは可能だろうか。時空の概念を３次元的なままの表現は陳腐ではあるけれど、時間と空間をこちらから能動的に選択することで、安直な接続設定からのチャネリングなどというところではなく、新しい意識反転領域へのアクセス…。

■まあ他者にそれをやれと言うのではなく、自らもこの心身を無理なく用いて為してみるのが正道ではあろう。耽ることなく、白けることもなく、そちらの方向に手をも差し伸べること。それにしてもこの普段から奇跡的に共有している３次元世界もまた美しい。雨上がりに街角で野生のポピーが風に揺らいでいれば、つい自然に手を伸ばしてしまう。意識触手を伸ばす方向はそちらばかりではないのだけれど。

■いずれこの花の裏側でも会えるだろうか、多くの人たちと…。私はもう少しだけ、この世界を楽しみ味わっていたいのだけれど。

2006.05.10 Wednesday