#049　双子の間に世界を挟んで予祝する

■双子の姪っ子に話しかけると、時々返事がステレオで返ってくる。同じキーで同時にだ。多重録音したエンヤの歌声のように、印象的な豊かさが感じられるのである。通常感覚で言えば、その心地よさは私の耳を介した脳の中で生じているわけだ。もちろんそばに別の人がいれば同様だろうが、その奥行き感覚は発声源としての当人たちには逆に体感できない。双子の世界はいかなるや？

■昔「１つだけでも可愛いものが２ついると倍以上にとっても可愛い」と言っていた女性がいたが、その感覚がようやく分かったような気がする。昔はいろいろなところで双子が生まれると忌み嫌われる風習のあった。「北斗の拳」のリンが天帝と双子だったので、殺害されるべきところをかろうじて野に放たれたという類の話は数多くある。諸説はあろうが今は逆。双子でいてくれて有難う。

■昔は双子だと先に生まれた方が妹弟とされたようが、今は先に世に出た方が姉兄とされているとか。そのいわれには諸説あるけれど、はて彼女たちはどちらがどちらだったか聞きはぐれてしまたな。生まれる以前からずっと良く似た振動光で生きているツインの超常感覚に関しても俗説から科学的な話まで諸説紛々だが、今生以前からの関係云々も全否定するほど即物的でもありはせぬ。

■高校時に東京大学教育学部付属中学から来た友人がいたけれど、今では研究のために双子を安い学費で入学させているらしい。実験材料でもあるわけだから、健康診断も東大まで行ってかなり入念にしてもらえるとか。まあ片割れがピンチになるともう片方もそれを知る云々という話に始まり、確かに様々に研究すると面白かろうな。でも姪っ子たちにを実験素材にはさせませんよ。

■世界観がそうなっているからなのだが、この世界には常に対性があり、ペアが存在すると考えられている。生まれてからずっとワンセットとされてきたけれど、敢えて別の高校に進学する２人の気持ちはいかなるものだろう。それぞれが今までとは違った世界体験ゾーンに突入していくわけだ。パパママの想いたるや想像し切れるものではない。オジ馬鹿を超えて思い切り生を寿ぐばかりである。

■さて我が家のデルピー＆ミカンは６匹兄弟のうちの兄妹２匹である。他の４匹とはもう今生では会えないだろう。それでも「我が家に来てよかったね」とか、「来てくれて有難う」などと言われているので、いくら猫の気持ちは分からないとは言え不幸ではないと思いたい。姪っ子と猫では次元が異なろうと言われるであろうから、その間に全てを挟んで万物を予祝してしまう私である。

on 2006.04.05 Wednesday