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■１■2016年５月、奈良県飛鳥でレクチャー＆綿棒工作のイベントをした時のことだ。メンバーの１人が複雑なコンペイトウのような立体を示して、｢これは一体どういうものですか？｣と問うてきた。自作したと言うその綿棒多面体が５重回転対称性を有するとだけは分かったが、内部構造がさっぱりわからない。

■２■その初めて見る構造物は、今までよく知っている正多角形で覆われている球形状のものではなく、また内部が多数の綿棒で満ちているとはいえ何層かの殻になっているわけでもなかった。複数種の角錐が外に向かって多層に重なり伸びているのだが、その頂点を結んでも正３角形や正５角形になっていた。

■３■正直に分からないと答て、内部構造は一体どうなっているのかを尋ねてみた。自分でも何ができるか分からないけれど、とにかく繋がるところはみんな繋ぎ、角錐が立つところにはできるだけ立ててみたと言う。その時の素直な感想は｢ああ、自分の綿棒多面体の時代は終わったのだな｣というものだった。

■４■その立体は多層の多面体ではなく、ミクロ-マクロ方向ばかりが目立つ構造だった。中心に据えられたに｢星の種｣の頂点からできるだけ正３角錐と正５角錐を立て、さらにその頂点同士から内側に向かって新しい角錐を入れ込んでいるようにも思えたのだが、その時はイベントがあるのでそのままになった。

■５■多面体制作チームASUKA界隈では、それまでにない綿棒多面体を始めて作った人は、その命名権を有するというルールがあり、その見た目がトゲトゲした立体は、作者の娘の名前を取って多面体｢アイカ｣と名付けられた。その娘は件の綿棒多面体を見せたら、すぐに同じものを自力で作ってしまったという。

■６■チームASUKAのツッチーこと辻野氏にアイスクリームをおごってもらった時、そのヒョロガリさを見て｢胸薄いね､幸も薄そう｣と平然と言っていたあの娘がそうだったのかと後で知る。多面体｢アイカ｣はその後も進化しながら多数制作された。その制作者は、後に綿棒多面体では｢創り人｣と名乗ることになる。

20240123 Tuesday