(617)中山平温泉「あすか旅館」

■JR陸羽東線に並行して走る国道47号から、線路をまたいで細い田舎道を進
み、更に坂を下った道を進むと「あすか旅館」があった。当宿は日帰り入浴を
08:30〜16:00と早朝から受け入れてくれているので、朝イチを狙って訪れたの
だが、都会にはない何とものんびりした雰囲気を纏った本物の温泉宿である。

■玄関を入って声をかけると、帳場の奥から女将さんが出てきて、ざっくりと
湯船の説明をしてくれた。湯治棟や宿泊棟の混在した、広くて複雑な初めての
建物の中を、口頭の説明や張り紙の指示だけで進むのは、どこかRPGをやっ
ているようで迷うのも楽しい。取り敢えず簡素な脱衣室を通って浴室に入る。



■かなり年季の入った湯治場風の佇まいが好ましい。浴室中央にはタイル張り
の丸い柱が1本立っていて、その左右に大浴槽と小浴槽がある。左奥の空間は
多分、かつて打たせ湯があったスペースかな。左側にあるガラス窓に面した木
造の主浴槽は、縁も湯船の中の底板も、金属の鋲できちんと固定されている。



■この時の主浴槽の湯量は9割程でオーバーフローはしていなかったが、適温
でとても心地よかった。周囲に張り巡らされている様々なパイブにも、析出物
が付着していて心がときめく。午前の光が湯面にきらめく。欲張って複数の温
泉に入る予定でなかったら、もうここを堪能するだけで充分なくらいである。



■隣のコンクリート造りの小浴槽に目をやると蛇口から湯が投入されており、
湯船の縁から石造りの床に流れ出ている。そちらに移動して、勢いよく入ろう
としたが、熱い!慌ててかき混ぜて改めて入ろうとしたが、これは無理ーっ。
後で見ると、湧出時の泉温が78.4℃とある。ここは投入後冷やすのだろうか。



■ここには貸し切り風呂もあるが、宿泊ャ専用ではなく立ち寄り入浴にも開放
してくれているので入ってみた。浴槽は小ぶりだが木製の湯船が優しく体に馴
染む。湯温もちょうどよく、スルスルスベスベのサッパリとした浴感がある。
ここれだけで長湯をしたい心地よさだ。滑らかな癖がない素晴らしいお湯だ。

■さらにここには一度服を着て建物の外に出ると露天風呂もある。ところどこ
ろ中が見えそうなくらいざっくりした作りの囲い塀の中に、実に開放的な作り
の露天である。普段は人もいない山の中なのに、この日はちょうど稲刈りらし
く作業の人がちらほらといたが、気にせずに自然の中での湯あみを堪能した。



■お礼を言って退出しようとした帰り際に、女将に呼び止められて、冷やした
この宿の湯の飲泉を勧められた。そうだった、ここのアルカリ性単純泉は、飲
める温泉の宿として有名な全国に知られているのだった。まろやかですっきり
した飲み心地だ。美味しいですと言うと、ちょっと待っててと言って、奥に。



■奥からペットボトル入りの温泉水を持ってきてくれて、持って帰りなさいと
言ってくれた。ここの湯は胃腸の調整にとても効果があるらしく、客が飲んだ
後に便器から溢れ出るほどの宿便が出たと笑って話してくれた。立ち寄り入浴
客にも、大崎保健所の飲用許可取得済の温泉水持ち帰りサービス有りなのだ。

     ★所在地:〒989-6832 宮城県大崎市鳴子温泉星沼68-1
    
   Tel.0229-87-2131 https://www.nakayamadaira.com/innlist_detail
       ・泉質/アルカリ性単純温泉
       ・泉温/78.4℃
       ・pH/8.5
       ・湯使い/加温消毒なし、加水あり(湯張りの場合のみ)
            循環あり(浴槽の温度管理のため。掛け流しを併用)
       ・日帰り入浴/600円、湯めぐりシール2枚
       ・利用時間/8:30〜16:00
       ・温泉水持ち帰りサービス(味も良く、胃腸に良い)
       ・アクセス/JR陸羽東線・中山平温泉駅から徒歩15分(1.2km)

人生丸ごと湯治日記(617) 20190926