■三重県の湯の山温泉は四日市市から出ている近鉄湯の山線の終点からさらに車で10分ほど奥まったところにある。しかし今日は先ずその終点駅の少し手前の踏み切りを渡り、線路端にある片岡温泉を訪れてみた。泉質に関しての造詣が深い郡司勇氏が、雑誌でこの温泉を掛け流しの本物の温泉であると、好意的に紹介していたのである。
■湯の山温泉郷に分類しているが、実はこの片岡温泉は湯の山温泉には属していない一軒宿の温泉で、いわゆる温泉本にもなかなか載っていないが、毎分600リットルと豊富な湯量に加えて、源泉温度も44.1℃なので加水・加熱を一切していない心地よい湯質が味わえるとのことである。到着してみると、広い駐車はがらがらだった。
片岡温泉の内風呂は、窓枠を見ても分かるようにかなり広いが、良質の湯の掛け流しである。
■1000円を払って中に入ると、食事もできる大きめの休憩室や、体を伸ばせる休憩イスが並ぶ広い休息所などがあり、全体的にゆったりした雰囲気だ。ここの施設自体には宿泊設備はあるものの、宿泊客を積極的に呼び集めようという営業努力をしているわけでもなさそうで、普段はもっぱら日帰り入浴の温泉として機能しているようだ。
■それにしても客自体は日曜日の昼間だというのにぱらぱらとまばらだ。私個人としては贅沢でありがたいことなのだが、こんなにいいお湯があまり人が入らないままどんどん掛け流されてしまうとは何とももったいないことだと思い、どうすればこの施設の経営をより振興させて、廃業などの憂き目を見ずに済むか考え始めてしまった。
外の露天風呂は浅くて少しぬるめである。加温も加水もしていないので自然に低めで安定。
■しかし実はそうではなかった。加熱用のボイラーや加水用のタンク等の施設が不要なのに加えて、有り余るお湯は近くの温泉センターにも分湯しているという。商売熱心である必要がないのかもしれない。入浴料金は施設やホスピタリティ面のみを見ると普通の感覚では高いようだが、温泉の泉質や湯量の面を思えば適正な設定だろう。
■掛け流ししている豊かなお湯は少しぬるりと感じるくらい滑らかで、広めの内湯で見ると無色透明というよりは炭酸水素イオンのせいだろうか、少し緑がかっている。湯の流出口には飲湯用のカップがあることからも、循環させていないことが分かる。このpH8.6のアルカリ性単純泉を一口飲んでみたが、癖がなく味はほとんどしない。
片岡温泉の入り口はかなり地味だが、駐車場は広くガラガラ。日曜日なのにこれでいいのだろうか？
■湯質は上質、湯量も豊富なここの湯は体がとてもよく温まる。外の浅めの露天風呂は温度が少し低いが、こちらも横たわるように体を伸ばし、空を眺めながらゆっくりつかっていると実に気持ちが良い。広い休憩所で休んだり食事をしたりしながら１日ゆっくりするにはもってこいの施設である。今度は１日がかりで訪れたいものだ。
★所在地：兵庫県神戸市北区有馬町1771?1
TEL.078-904-4588 http://dobokukenchiku-kouseikai.or.jp/arima/
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(※)現在は場所を同じ菰野町でも線路の反対側に移転し、あの鄙び具合からは想像もつかないほど近代的な複合温泉リゾート施設の、「アクアイグニス片岡温泉」として生まれ変わって稼働している。→ https://aquaignis.jp/spa.php
人生丸ごと湯治日記（５５６） 20031116
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（556）湯の山温泉「片岡温泉」