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(※)画像は「フォートラベル」 http://4travel.jp/ より借用。

■ＪＲ北陸本線の加賀温泉駅で特急しらさぎから降り立つと、車内の暖房で後頭部に淀んでいた眠気を冷気が一気に吹き飛ばす。この加賀温泉駅を中心にして周辺には山代温泉・山中温泉・粟津温泉・片山津温泉、少し外れて芦原（あわら）温泉があり、このあたりを総称して加賀温泉郷という。北陸三県で最大級の温泉街の１つである。

■もてなしと料理の心つまりホスピタリティが守られており、しかも共同浴場を中心に温泉街が形成されていることも踏まえて、日本の温泉文化を最も正しく伝えているのがここ加賀温泉郷であろうと温泉教授松田忠徳氏は「日本百名泉」の中で語っている山代温泉は1300年の歴史とされる北陸随一の古湯で、「千年温泉」の１つである。

　　
　　　　　　　　読書スペースにて。本がたくさんあるスペースはやはり落ち着く。

■そこで駅前にはもっと繁華街が広がっているのかと思いきや、大きなショッピングセンター以外にはさほどの建物もない。そこかしこ目につくのは雪ばかり。広い駅前のバスターミナルから10分ほど路線バスに乗って山代西というバス停で下車し、そこからさらに数分歩いて「温泉めい想倶楽部冨士屋」という温泉旅館に辿り着いた。

■この不思議な名を持つ宿は今回初めてインターネットで予約してみた旅館なのだが、思っていたより落ち着いた雰囲気をもっていた。中に入るとまず広い和風のフロアーがあり、中二階にはセンスの良い本棚と椅子が設置された読書スペースがある。癒しの空間がコンセプトだとのことだが、ギャラリーもあり確かに寛げる場であった。

　　
　　　　　　　　　夜の檜の湯。湯船はちょい深めで、底にはごろた石を敷き詰めてある。

■ここ山代温泉は今から1300年以上前の神亀２年(725年)に、高僧行基が修行のために霊山白山に向かう途中、不思議にたなびく紫の雲に導かれ、湯たまりで羽の傷を癒しているカラスを見つけたのが始まりだと伝えられている。以来人々は「烏の湯」として親しんできたというだが、当地では浴衣のことをカラスと呼んでいるそうだ。

　　
　　　　　朝の庭園露天風呂。水をきれいにする「薬石」の戸室石を底面に使ってある。

■宿には檜の湯・御影の湯・庭園露天風呂と２つの大浴場の５つの湯があり、男女入れ替えによって明日のチェックアウトまでには全て入れるシステムになっている。平日だからか宿には客が数組しかなく、おかげで私はかなり独占的に温泉に浸かることができた。泉質はナトリウム･カルシウムー硫酸塩･塩化物泉でpHは7.8で無色透明。

　　
　　　　　　　　手前は大浴場の薬師の湯。以下３枚の画像は宿のＨＰより。

■湯温が少し高めの設定に感じるのは寒さのせいもあるのだろうが、本当にじっくり入ってから出ないとすぐにまた体が冷えてくる。山代温泉富士屋の湯は山代温泉で一番歴史深い『第一号源泉』を使用しているとのこと。露天からふと見上げると雪国特有の曇り空の隙間から細い三日月が顔を出している。ゆっくりしたい温泉地である。

　　
　　　　　　　　御影石の湯。少し離れたところにあり、有料貸し切りとして入浴。

■食事のメインはご当地のズワイガニだが、他の品々もこれでもかというような多種多量でないところがまた、小食の私にはありがたい。今回はパソコンに向かい続け過ぎたために肩凝りがひどかった私だが、湯に入り、読書して、また湯に入るうちに凝りは霧散した。さりげなく置いてある備え付けの冷水がまた身にしみて美味しい。

　　
　　　　　　大浴場五彩の湯。最初に入ったが、ちょい熱めなので長湯ができなかった。

■ここの湯は山代温泉で一番歴史深い第一号源泉を使用している。湯温が熱く感じるのは寒さのせいもあるのだろうか。じっくり浸からないとすぐにまた体が冷えてくる。露天からふと見上げると雪国特有の曇り空の隙間から細い三日月が顔を出している。ゆっく過ごしたい温泉地だが、有名な九谷焼窯跡を見に行くことも叶わなかった。

　　　　　　　　　　　　山代のいで湯に遊ぶたのしさはたとへていえば古九谷の青　　与謝野晶子

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★所在地：石川県加賀市山代温泉桔梗丘２丁目121-３ TEL.0761-77-1122 http://www.meisouclub.co.jp/

人生丸ごと湯治日記（５４５）　20030203 re.