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■帰路は高山見学を次回に譲り、国道41号線上をひたすら南下したが、下呂に辿り着く頃には日もとっぷり暮れていた。下呂を通過するのであればせめて河原の噴泉池露天風呂に浸かりたいと思い、所在地を調べようと街の入り口にある案内板の前に車を止めた。すると突然車の後ろから近づいてきて、窓ガラスをノックする者がいた。

■駐車禁止のところに止めたと注意されるのかと思い、謝ろうとして窓を開けると、元気そうな老人がにこにこ顔で覗き込んできた。「無料温泉案内なんだけれど、どんな温泉に入りたいの？泊まり？それとも立ち寄り？」特定の旅館の客引きなのかと思って身構える間も与えずに、予算に合わせた温泉の種類を早口で説明し始めてくる。

　　

■「帰路の途中で、ちょっとだけ立ち寄り入浴したいんですけれど、せっかくだから循環式の銭湯は遠慮したいんですけれど」と答えると、「じゃあ私について来なさい」と言うが早いか、その老人は停めてあったスクーターに飛び乗り、さっさと走り出した。暫らく先の旅館の駐車場の前で、ここに車を停めろと手招きで指示している。

■車を所定の位置につけるやいなや、彼は旅館から飛び出してきて「話はつけておいたから」と言う。こちらがお礼をする暇すら与えずに、スクーターに跨ると走り去って行った。取りあえず旅館に入って「あのー」と言うと、「はいはい、伺っていますよ。じゃあ前払いでお願いしますね」と言って、さっさと温泉場に案内してくれた。

　　

■狐につままれたような気分のままだけれど、とにかく目の前の温泉に入って味わうことにした。その宿の名前が分かったのはここを出る時だったが、ここ「湯の宿いずみ荘」の温泉は、湯質が異なる石囲いの内風呂が２つ、そして戸外に露天が１つある。女湯もまた同じ構造だと思われる。下呂はアルカリ性単純泉を集中管理している。

■ようやく湯船の中で、なんで今自分が湯に浸かっているのか考えてみた。あの老人は一体何者なのだろう。大ホテルたちに対抗した小さな旅館の客引きか、いたずら好きの狐狸妖怪なのか。いや、本当に下呂の温泉案内ボランティアなのではないか。何はともあれ、下呂の立ち寄り温泉に浸かれたので、感謝するに越したことはない。

★所在地：岐阜県下呂市湯之島212 TEL.0576-25-3160 http://www.izumi-so.com/

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(※)下２枚の画像は宿のＨＰより借用。

人生丸ごと湯治日記（５２５）　20011130 re.