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■１■昨夜立ち寄り入浴させてもらおうと電話を入れてみたが、終了時間前な
のにもう終わりと言われたので、今日は朝イチを狙って宿を少し早めに出発し
た。地図から山の中に入っていくイメージだったが、むしろ学校もある町中に
降りて来た。しかし小屋原温泉への道に入ると突然周囲の雰囲気が変わった。

■２■秋の温かい朝日の中、静かな一本道に枯れ葉がさわさわと舞っている。
やがて綺麗な渓流の横に佇む小さな湯治宿風の建物が現れた。何と言うか、温
泉好きを震わせる雰囲気がある。玄関でさっそく立ち寄り入浴をお願いする。
この温泉宿の風呂は、それぞれが貸し切りで使うことになる浴室が４つのみ。

■３■優しく人懐こい女将さんは、奥の１つは埋まっているから手前の３つの
好きなところに入って良いと言ったけれど、浴室に続く廊下まで来てみると、
既に宿泊客らしき人が２室に入っていて、空いているのは一番手前の浴室のみ
だった。まあ泉質に変わりはないので、ありがたく掛け流しの湯を頂戴する。

■４■浴室の左隅に長方形の浴槽があり、温泉成分の抽出物が縁や床や排水溝
にこびりついている。乾いた板壁が暖かい。浴槽に身を沈めると、流れ出たお
湯で洗面器が排出口の方に流れて行く。贅沢な湯量だ。はらってもはらっても
、体に見る見る間に気泡が付いていく。長湯にちょうどよいぬる目の湯温だ。

■５■コンクリート製の湯船に着く石灰華の描く抽象画の色合いを美しいと思
える幸せ。関西・中国地方にある炭酸泉では最も優れ、全国でも５指に入る優
れた泉質であるという記事が壁に貼ってある。舐めると水っぽい甘塩味と強め
の炭酸味がある。湯質は硬めだが、肌に着く気泡の感触でぬるすべ感もある。

■６■立ち寄りの場合は最初に浴槽間の移動禁止を言われたが、ここの４つあ
る浴槽はそれぞれ温度、味、色合い、炭酸の濃さ、泡付き具合など湯の感触が
異なるらしい。４つの浴槽全てを味わうのは、宿泊した者だけというわけだ。
その中では今回入った４番目の湯船が、炭酸と出し味が一番強い湯船らしい。

■７■またこれも後で知った事だけれど、この手前から１番目と２番目の浴槽
の間から源泉が出ているらしい。そして１番目の浴槽の感触が最も良いとのこ
と。何も知らずに入ったのだけれど、温泉の神様がいるならば、本当に自分は
愛されているのだなあと、窓の外の秋の色合いを眺めつつ己惚れたくもなる。

■８■炭酸が表面でぱちぱち弾けるのを見ながら、湯船が小さいのは湯量の入
れ替わりが早いので、炭酸その他の濃度が保持されるからだろうと想像してみ
る。本当にぬる目で体に負担もなく、いくらでも入っていられる。４つの浴槽
の前の木造廊下の湯治場感もたまらない。本当に有難う、14代目の女将さん。

　　　　　★所在地：島根県大田市三瓶町小屋原1014-1 Tel.0854-83-2101
　　　　　・源泉名／小屋原温泉
　　　　　・泉質／ナトリウム-塩化物温泉
　　　　　・pH／6.0
　　　　　・湧出量／毎分30.8リットル
　　　　　・源泉温度／37.8度
　　　　　・湯づかい／源泉掛け流し
　　　　　・宿泊料金／１泊２食付9,000円～
　　　　　・風呂の種類と数／貸切内湯４
　　　　　・日帰り入浴時間／9:00～19:00※要確認
　　　　　・料金／１人１時間500円（通年営業）

人生丸ごと湯治日記（４９１）　2018.11.14 Wednesday