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■１■ここはつい最近まで、あまり多くの人に知られることもなく、ひっそり
と湯治専門の宿として営業していたところだそうだ。先代の女将までは湯治目
的以外の観光者や健康な者は入浴を拒否されていた温泉だったという。現在で
は宿泊施設であることをやめて、日帰り入浴のみとして機能・営業している。

画像は「AWL Action」より借用。

■２■千原温泉は鄙びた木造建ての建物が、前を流れる綺麗な川に沿って建て
られており、手前には数台分の車を停めるスペースがある。この鄙びてはいる
けれど本物の湯治宿的な雰囲気はたまらない。真ん中の建物で料金を払ってか
ら、既に炬燵が出されている無料休憩所の前を通って、奥の脱衣所へ向かう。

■３■手狭なの脱衣所には扇風機ではなく温風機が置かれていた。摘み木を横
にスライドして開け閉めする日本家屋的な戸の向こうに浴室がある。そこを抜
ける時に頭をぶつけた。全体的に作りそのものが低めで、７～８段の階段を降
りて行く途中、伸び上がれば隣の女風呂空間も覗けそうな寸法の造りだった。

画像は「PLAY LIFE」より借用。

■４■緩やかな階段を降りて行く途中、カーテン出仕切られた空間があった。
この中に事前に調べて知っていた、寒い時に上がり湯代わりに湧かしてある五
右衛門風呂があるのだと分かった。浴槽は半地下と言ってもいいところにある
。見るからに濃厚な緑黄色の濁り湯が、少し暗めの浴槽内に湛えられていた。

画像は「全国の温泉47都道府県厳選集」より借用。

■５■石鹸やシャンプーどころか、洗い場そのものがない。そもそも湯治場な
のだから、入ってただ浸かるだけの温泉だ。先客は２人。軽く挨拶してから湯
船に入る。８人で満杯の湯船の縁の上部から横にかけても温泉成分の結晶がこ
びりついて伸びている。その縁に頭に当てがうような形で静かに体を伸ばす。

■６■濃いけれど、からだに重い感じは全くない。足の下は全く見えないが、
足触りからすのこであることが分かる。その隙間から足元からは体験したこと
がないほど大きな泡が、ポコポコ、プクプクと音を立てながら上がってくる。
体の表面を這うようにして、次々に上がって来るのが分かる。くすぐったい。

■７■温泉好き垂涎の、足元湧出の温泉である。濃厚そうな湯をこっそり舐め
てみる。塩辛い味だけれど苦くはない。濃い目の味でかなり行ける。だし汁の
様な濃い味だ。ちょっと手を加えればスープとしても美味いかも知れない。ぬ
るいけれど長湯をしていると、血行がよくなっているのがそれとなく分かる。

■８■湯に浸かりながら泡の音を楽しんでいると、湯が肌に染み込んでくる。
見上げれば男女の浴室を仕切る板壁１枚で隣り合い、その上方は空いている。
声を出すものもおらず、浴槽内は湯に抱かれたまま静まり返っている。温度は
人肌程度の34.5度。夏場などは長湯していても心地よくてたまらないだろう。

　　　　　★所在地：〒699-4711 島根県邑智郡邑智郡美郷町千原千原湯谷1070
　　　　　　　　　　　　Tel.0855-76-0334 http://www.chihara-onsen.jp/
　　　　　・料金／大人500円（１時間）
　　　　　・お風呂の種類と数／内湯男女各１(男女共用加温風呂１）
　　　　　・営業時間／8:00～18:00　定休日毎週木曜日
　　　　　・泉温／33.8℃
　　　　　・湧出量／毎分59リットル
　　　　　・pH／6.5
　　　　　・成分総計／10.17g/kg

人生丸ごと湯治日記（４８７）　2018.11.13 Thursday