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■１■「寿湯」は東郷池に近いＪＲ松崎駅前から、線路沿いの道を行くとある
共同浴場だ。駐車スペースを探しながら、日本一細い路地を抜けて行くと紹介
されている入り口を視認する。結局駅前に車を停めてそこから東に徒歩１分で
辿り着き、隣にある管理者の｢理容シミズ」に料金200円を払っていざ入浴だ。

■２■入り口には建物の端に「寿湯専用」と書かれた狭い通路がある。ああこ
れが有名な狭いアプローチのトンネルだなと思いつつ、横向きに入ってみた。
自分の中で本当に横身でキュウキュウに狭い所に潜り込んでいくイメージを作
り過ぎていたのだけれど、普通に正面向きで両肩が壁に触れない幅があった。

■３■通路を抜けると右手に浴舎がある。別府や諏訪を連想させる、茶褐色の
トタン張りの実に鄙びた入母屋造りで、左に男湯、右に女湯の入り口がある。
戸を開けて中に入ると、すぐそこの狭いスペースに遺跡のような無人の受付が
ある。さらに先に進むと、地元客の入浴道具が多数置かれた脱衣所があった。

■４■カラカラとガラス戸を開けて浴室に足を踏み入れると、ほぼ正方形に見
える色あせた水色のタイル張りの湯船が、先ず目に飛び込んでくる。透明な湯
が大量に投入され続けているが、これがとても熱湯であることは事前に知って
いた。湯船の外でゆっくりとひげを剃っている先客一人に取り敢えずご挨拶。

■５■体に数度掛け湯をしてみる。超絶に熱い湯だ。思わず「熱っつー」と声
を出すと、先客が振り向いて「薄めてもいいよ」とぼそっと言ってくれた。し
かし水の蛇口から出るであろう水量より、そのすぐ横の湯口から掛け流されて
いる源泉の方が圧倒的に多い。焼け湯に射し水。無理です、常温にするのは。

■６■しかしこの先客がいなかったら、逆に熱いお湯を何倍も掛け湯し続けた
だけですでに満足して、湯船には浸からずに帰ったかも知れない。それほど熱
く感じたのだが、45℃くらいだったかもしれない。源泉からは少し焦げたよう
な匂いがする。口に含むとわずかに塩味がした。先客はゆっくり髭剃り中だ。

■７■意を決して湯船に突入する。息を止めて全身を湯に浸ける。冷たい冷鉱
泉に入るのと基本的には一緒なのだ。じっとしていると身体の周囲に中間温度
の湯膜ができる…ような気がする。ただ幸いにも熱い熱湯の中で、体が真っ赤
になる手合いの温泉ではなかった。熱さが身体をシャキーンとさせてくれる。

■８■この温度での長湯は叶わないけれど、鮮度抜群の熱湯なので要は楽しみ
方次第なのだよねと自分に言い聞かせる。先客の手前、１度きりでは湯にビビ
ったと思われては悔しいとひとりよがりで自らを鼓舞して、もう１度じっくり
湯船に浸かった。これは湯上りの引き締まり感が癖になる類の湯に違いない。

　　　　　★所在地：鳥取県東伯郡湯梨浜町旭404
　　　　　・温泉利用状況／完全放流式
　　　　　・泉温／50度
　　　　　・成分総計／1.491g/㎏
　　　　　・入浴料金／200円、洗髪料金／50円。前払い制（清水理容所にて支払い）
　　　　　・入浴時間／８時～22時　第１第３月曜日定休
　　　　　・入浴施設／内湯　源泉かけ流し
　　　　　・駐車場／清水理容所前に町営駐車場あり（41・45・80・81番）

人生丸ごと湯治日記（４８１）　2018.10.24 Wednesday