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■１■「貝殻節」とは鳥取県の民謡だ。かつて県中北部沖合いで大量のホタテ
ガイが発生する年があり、沿岸の漁師たちが底引漁で貝を獲っていた。その際
の労作唄が貝殻節だ。これが後に浜村温泉で歌謡曲調でも歌われるようになっ
たという。県民ではないのでこのまま知らずにいても許してもらえるだろう。

■２■浜村の地はかつて賑やかな温泉街だった。今は少し寂れてしまったが、
「旅風庵」はその浜村温泉に残る唯一の温泉宿だ。以前は｢浜村ビューホテル｣
だった。かの小泉八雲もかつてこの浜村温泉を訪れていた。八雲著の『知られ
ぬ日本の面影』第21章「日本海に沿うて」の中に、その記述が残されている。

■３■フロントで立ち寄り入浴の手続きをして、男女別大浴場のある４階に向
かった。脱衣所から内湯に入ると、広いガラス窓に沿って細長い浴槽がある。
無色透明の湯なのに薄茶色に見えるのは、長い間に温泉成分が浴槽内のタイル
にこびりついたからだろうか。ばっと見ちょっとしたモール泉の様に見える。

■４■一番奥のガラスドアから外にでると、外からの目隠しを兼ねた樹木を背
景に配した岩造り仕様の露天風呂がある。竹垣模様の塀に囲まれているが、閉
塞感はない。降っていた小雨もちょうど止んで心地よい。こちらは無色透明だ
が、オーバーフロウの流出部分には、内湯同様の温泉成分が付けた色がある。

■５■無色透明・無味無臭のお湯の泉質は、温泉分析表を見るとナトリウム・
カルシウムｰ塩化物･硫酸塩泉となっている。循環消毒と放流掛け流しの併用を
明記してあり、成分分析を町長が申請しているので、集中管理システムからの
配湯かと思われるが、客もおらず独占で味わう湯質は新鮮で何の問題もない。

■６■歴史ある浜村温泉で温泉宿を維持してくれている、どっしりした「旅風
庵」の入り口に感謝の意を表して、ここからは一足飛びに鳥取県の西端にある
皆生温泉に向かった。ほとんどの道程が海に沿った無料の高速道路なのだが、
左右両側にこれでもかと黄色く花咲くセイタカアワダチソウが群生していた。

　　　　　★所在地：〒689-0332 鳥取県鳥取市気高町勝見696?１ Tel.0857-82-0531
　　　　　　　　　　　　https://www.ryofuan.com/
　　　　　・泉質／ナトリウム、カルシウム－塩化物、硫酸塩
　　　　　・泉温／58.0度
　　　　　・蒸発残留物／1.101g/kg
　　　　　・pH／7.8
　　　　　・立ち寄り入浴／時間:14:00～20:00
　　　　　・料金／500円

人生丸ごと湯治日記（４７７）　2018.10.23 Tuesday