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■１■昔の駅舎や駅周辺の風景を知る者にとって、近代的な箱根湯本駅は隔世
の感があるけれど、その通路デッキからも見える「かっぱ天国」の宿とその看
板は、逆にさほど変わらない懐かしさを感じさせてくれる。駅から歩いてすぐ
そこの印象だったけれど、フロントまでは神社に向かうような急階段だった。

■２■玄関に近づくと、どこからともなく現れたお爺さんが、ねぎらってくれ
る。カッパ？カッパなの？と思っていたら、宿の人だった。温泉はこの上なの
だが、フロントで宿泊の手続きを済ませると、泊まる部屋は階段を下りて外を
通り、足湯が隣にある駅から見た建物だった。部屋からお風呂はかなり遠い。

■３■東京から近い箱根なので、宿泊も立ち寄りも外食値段すらも、全体に高
い箱根値段なのに、箱根湯本駅のすぐ傍に安価で泊まれるのは有難い。泉質の
よさは言わずもがなの温泉を掛け流し、野天風呂風に設えた岩風呂なのだから
苦情のあるわけがない。それを台風の影響もあるのか、独占で味わえた至福。

■４■部屋は古くて安普請ではあるけれど、清潔で居心地が良い。表通りの飲
食店で普通の味のものを箱根値段で食べるのもつまらないからと、調べておい
た「ハイカラ中華日清亭」で夕食を取って、部屋に戻ると既にお布団が敷かれ
ていた。門限などはなく、もう帰りに鍵返却までは放っておかれる。有難い。

■５■関西に接近中の台風21号の影響もあるのだろうか、窓から見下ろす駅前
通りには夜の20時にもなれば、ちょっと怪奇映画を彷彿とするくらい人っ子一
人いない。風呂は22時で終わりになるけれど、その後全て抜いて露天岩風呂の
浴槽を毎日掃除して、それから湯を溜めるのだから、仕方のないシステムだ。

■６■そのおかげで朝の一番風呂はとても新鮮だ。他の客も来ないので貸し切
りで堪能させてもらった。緑の木々とその向こうを眺める艦橋のような広い脱
衣所も好きだ。林の斜面のあちこちに今は使われていない道や階段が多数残っ
ている。この宿も急斜面に湧く温泉の管理運営で色々頑張ってきたのだろう。

■７■美味なる食事や居心地の良い豪華な部屋等を求める温泉好きのベクトル
もあるだろうし、それはそれで一つの王道だろう。しかし単なる温泉好きにと
って、このアクセスの良さでこの良泉質の温泉。そしてそこに安価で泊まるこ
とすらできるということの他に何を求められよう。かっぱ天国、お勧めです。

■８■温泉分析表によると、ここの源泉名は白石地蔵の湯で、源泉温度は58.8
℃だ。使用位置では42度となっているけれど、それは自然のものなので日によ
って高くなったり低かったりする。知覚的所見は無色清明塩味無臭。pHは9.1､
成分総計1.043g／kgのナトリウム－塩化物・硫黄塩温泉だ。美人の湯だよね。

　　　　　★所在地：〒250-0311 神奈川県足柄下郡箱根町湯本777　TEL.0460-85-6121
　　　　　http://www.kappa1059.co.jp/
　　　　　・営業時間／10:00～22：00、無休
　　　　　・立ち寄り料金／800円、貸切風呂1000円 45分、足湯200円
　　　　　・アクセス／箱根湯本駅から徒歩２分

人生丸ごと湯治日記（４６６）　2018.09.02 Sunday