459spa

■あわら温泉は隣の石川県の加賀温泉郷（山中温泉・山代温泉・片山津温泉・
粟津温泉）のうちの１つくらいの認識だったが、県境を越えて福井県屈指の温
泉だったことを改めて認識した。一帯は元々これといった作物も育たない湿地
帯であり、1883年に農地の灌漑工事を行っている最中に偶然噴出発見された。

■「あわらグランドホテル」は、えちぜん鉄道三国芦原線の「あわら湯のまち
」駅から徒歩で数分の、温泉地の中心にある大きな老舗旅館だ。増築と他館と
の接続等で、現在では本館・東館・長生館・新館湯元館が、内部で接続してい
る。全体としてはここだけでもちょっとした巨大温泉館群という感じである。

■フロントのある本館でチェックインする時、カウンターには日本語が堪能な
中国人従業員が、一人で諸事雑務をこなしていた。炎天下の日中に立ち寄り入
浴客も早々のチェックイン客もいないためだろうが、海外からの大量客もさば
ける有能なスタッフなのだろうな。必要以上に気を遣わずに済むので有難い。

■この宿は今回利用した、食事なし、浴衣やタオル等一切のアメニティもなし
で4000円を切る格安のノンサービス･ビジネスプランから、25000円以上の豪華
プランまで、幅広い客のニーズを受け入れている。この日の部屋は長生館の２
階だった。目的は温泉なので、６畳の値段でユニットバス付き８畳は十分だ。

■当宿は源泉を敷地内に３本所有しているというが、各館それぞれが温泉テー
マパーク的な施設と湯舟を有しているからだろう、源泉かけ流しの浴槽はその
中でも五右衛門風呂と称する大きな壺湯だけだった。全湯に入るという目的の
ＲＰＧのようなノリのまま、まずは地下の廊下を通って、東館に行ってみた。

■さらに階段を上がると、男湯「朝倉門」、女湯「式部の湯」、そして最近は
女性専用タイムもない露天風呂「隆泉庵」の入り口が並んでいる休憩スペース
に出た。あわら温泉でも数少ない混浴露天風呂は、早い時間だからだろうか、
予想に反してほとんど利用されていない。ならば有難く独占しない手はない。

■「隆泉庵」は男女別々の小さな脱衣所が２つ並んでいるだけで、あとはもう
そのままかなり深くて細長い、石造りのきれいな露天浴槽だった。他の小さな
温泉地ならこれだけでも十分の人気浴槽だろう。独占状態に調子をこいて、自
撮りしていたら、それだけで真夏のちょい長湯で湯あたり気味になっていた。

■猛暑の中の入浴はクールダウンが重要だ。水分補給をして寛いでから部屋の
ある長生館に一度戻った男女専用が日を跨いで入れ替わる展望風呂「ひのきの
湯」は長生館４階にある。40℃ほどに設定された広い湯船に浸かれば、広いガ
ラス越しにあわらの温泉街が見える。なぜかここもまたほぼ貸切状態らしい。

■しばらくしてから、つい最近できた新館の湯元館に行ってみた。ゆったりし
た造りのアプローチを通って進むと、男湯「静かの湯」と女湯「平安の湯」の
入り口に出た。静かの湯には石造りの壺湯２つと広めの浴槽がある。夏場の長
湯の脱力疲労感に懲りたので、次の湯に備えてそれぞれの湯を軽く味わった。

■残るは東館にある大浴場「朝倉門」だ。（女性は庭園大浴場「式部の湯」）
拾い脱衣所内は豪華な造りで、浴場への入口は大小２箇所ある。立派な造りの
入口から浴場内に入ると、広い空間に複数の湯船がある。よく見ると湯がオー
バーフロウしすぎて湯舟が繋がったような設えになっている。面白い演出だ。

■しかしその右最奥にはなぜか大きな金のシャチホコが置かれている。これは
何なのか、名古屋在住の身としては大いに気になるけれど、ツッコミ先が見当
たらない。複数の湯舟には40℃ほどの湯が水没状態のまま投入されているので
、湯質自体は同じだが、浅さや広さが異なるのでバリエーションは楽しめる。

■その内湯の横にある五右衛門風呂と称する大きめの壷湯には、唯一の掛け流
し利用になっており、40℃程なので無色透明でマイルドな塩化物温泉にゆっく
り浸かることができる。逆に言えば、他の湯船は全て未加水・循環・加熱・塩
素消毒の湯使いなので、源泉を味わうにはこの湯船しかない。よく味わった。

■隣には薬湯があり、さらに先にはミストサウナやジェットバスや打たせ湯の
浴槽もある。また別とところにはサウナもある。それぞれの温泉仕様の好みに
対応しようとしてか、もはやちょっとした温泉ランドのようでもある。この各
浴槽は、24時で終わるところもあるが、基本的に24時間入浴可となっている。

■しかもここの宿泊者は「あわらグランドホテルグループ」の他の大きな旅館
「あわら温泉ゆ楽」(※１)と「ぐらばあ亭」(※２)にも、チェックインからチ
ェックアウトまでの間で無料で利用出来るのだ。しかし欲張って全て入ってい
たら、おそらく湯あたり×熱中症でぶっ倒れていただろうことは間違いない。

　　　　　　 ★所在地：福井県あわら市温泉４-２　TEL.0776-78-5500
　　　　　　・泉種／弱アルカリ性ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉
　　　　　　・pH／7.6
　　　　　　・源泉温度／50.7℃
　　　　　　・湧出量／毎分36リットル（37号・60号源泉混合）
　　　　　　・立ち寄り入浴／ 800円、15時～24時(不定休)

人生丸ごと湯治日記（４５９）　2018.07.17 Tuesday