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■１■湯郷温泉の「かつらぎ」を８時過ぎに出て、高速を敢えて避けて下道を
通って奥津温泉へ向かった。この奥津温泉の少し手前から橋を渡って、戻るよ
うに川沿いの道を行くとすぐに般若寺温泉の駐車場がある。この宿は１日最大
でもかやぶき屋根の離れに３組しかとらないので、車はそこに停めて大丈夫。

■２■そこから長いアプローチの石段を下り降りて行くと、かやぶき屋根の母
屋がある。そして規約を見ると犬が吠える。決して獰猛に吠えるのではなく、
飼い主に来客を教える若い番犬だ。飼い主が出てくるとぴたりと鳴き止んだ。
穏やかで知的なご主人が、温泉と風景等に付いて様々な話を説明してくれる。

■３■ここの立ち寄り入浴システムは事前予約制で、午前10時から１時間１人
1000円で貸切りとなる。母屋から少し川側に下ると湯小屋があり、そこが内湯
だ。段々によっている石造りの床とむき出しの壁の間に３人ほどは入れる、石
造りの小ぶりな浴槽がある。もちろん掛け流しだ。人肌より少し暖かい40℃。

■４■ちょうどよい温度とはこういう設定のことを言うのだろう。いつまでも
入っていられる無色透明の単純泉だ。ここには源泉が３本あり、温度は39℃、
40℃、43℃で、それらを混合して適温にしている。加水加温消毒なし。泉質は
アルカリ性単純温泉で、新鮮なつるつる＋ぬるぬる感は喜びを与えてくれる。

■５■ここだけでもずっと浸かっていたいところだが、外にある川岸の絶品露
天風呂も素晴らしい。２～３人でちょうど良い大きさの小さめな湯船が、貼り
だした大岩の壁と川の間に佇んでいる。体が喜ぶような透明で綺麗な湯だ。湯
船に浸かりながら、川に落ち込む滝や大岩や緑なす木々等をゆっくり眺める。

■６■水量豊かな目の前の、緑に輝く川面越しの左正面に町営の日帰り温泉施
設「大釣(おおつり)温泉」があるが、風景的には特に問題はない。ここは内湯
より少しだけ湯温が低いので、内湯よりさらにいくらでも入っていれるし、入
っていたくなる。耳を澄ませば滝の音がする。１時間とは何と短いのだろう。

■７■帰る前にもう１度内湯にも浸かりたいので、後ろ髪を引かれながら少し
早めに湯小屋に戻る。これはもう時間制限がなかったら、露天と内湯を半永久
的に行ったり来たりして至福の時間を過ごせるだろう。しかし時は来る。帰り
も建物に近づくと犬が鳴いて知らせて、御主人が出てくるというシステムだ。

■８■日本に生まれて良かった。温泉が好きでよかった。今日ここに来れて良
かった。そんなふうに感じるだけで、少しだけいい奴になった気がするのだか
ら、やはり温泉の至福は身でも心でも知っておいた方がいいと思う。日本人の
心の湯脈が枯れずにある理由の１つには温泉があるのではないか。再訪必来。

　　　　★所在地：岡山県苫田郡鏡野町奥津川西20の1　TEL.0868-52-0602
　　　　・立ち寄り入浴／10:00～15:00※要予約 1人1,000円
　　　　・源泉名／般若寺温泉
　　　　・泉質／アルカリ性単純温泉
　　　　・pH／9.1
　　　　・源泉温度／39度(自噴)/40度/43度(ポンプアップ３か所)
　　　　・アクセス／中国自動車道　院庄I.C.から22㎞、車45分。もしくはJR姫新線津山下車。奥津温泉
　　　　　行きバスで約１時間。大釣橋中銀寮前下車徒歩３分。

人生丸ごと湯治日記（３９０）　2017.10.16 Monday