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■１■やってまいりました広河原温泉。未舗装で車がすれ違うこともままなら
ぬ、難儀なダートロードも込みで小野川温泉からさらに１時間余り車を走らせ
て辿り着く、日本で唯一露天浴槽の中に間欠泉がある、温泉好き垂唾の的「湯
の華」。自然が厳しすぎるので年に半分は宿を休業する、この宿に泊ります。

■２■この間欠泉そのものの発見は約440年程前で、明治･大正時代は湯治場と
して栄え、旅館も予約しなくては泊れないほどだったらしい。しかしその後に
廃れて宿はなくなり建物は消え、この宿が2005年に宿泊施設としてスタートす
るまでは、間欠泉のある秘湯露天としてマニア間でのみ知られていたという。

■３■間欠泉は炭酸ガスによって噴出するということが、垂直に向いている湯
口から大きな泡と共に吹き出し始めるところを見れば分かる。止まっている時
もその穴に手をかざすと、もうすぐ噴出する時は炭酸ガスの軽い上昇が感じら
れる。湯口に耳を当ててみる勇気があれば、今が活性時か不活性かが分かる。

■４■間欠泉のお湯と炭酸ガスの戯れはずっと見ていても飽きない。同じパタ
ーンは２度とないし、落下する湯の形が生き物に見えたり、花火に見えたりす
るし、こちらの意識と会話しているかのようにも思えてくる。嬌声を上げれば
喜んではしゃぐように見え、ほめれば得意そうに小躍りするようにも見える。

■５■それを単なる独りよがりや勘違いだと決めつけようとしても、実際に繋
がっているように思えるその時は、自然を操るとか自分を特別視するとかいう
類の変な我がなければ、間欠泉と戯れているというその時のリアリティもまた
科学的認識の仕方と矛盾することなく、どちらも現実としてアリなのである。

■６■午後８時から９時が女性タイムで、その後は湯船の中で間欠泉だけでな
く、湯船に浸かりながら好きなだけ夜空の星を眺めることもできるというので
行ってみた。間欠泉は噴いていたが、それより夜空をびっしり埋め尽くす星々
が輝いていた。こんな満天の星を見るのは久しぶりだ。しかも露天の中でだ。

■７■男脱衣所の明かりを全て消すと、ほぼ真っ暗の中で頭上の星たちが良く
見える。目が慣れてくると、周りのものもそれとなく見えてくる。35.1℃の湯
温がちょうど熱さも寒さも感じさせない。流れ星が時々空を横切る。間欠泉は
噴き出している。ただ見るということ。こんな経験は滅多にできないだろう。

■８■ほぼ同時刻にチェックインした男女がいたが、ずっと間欠泉の噴出に出
くわさないらしい。翌朝私たちが充分味わった後、噴出が止まったので上がろ
うという時に彼らが入って来た。別に私たちが強運で彼らが薄幸とかいう話で
は全然ない。ただ対人でも対自然でも間合いの個人差はあるのはなぜだろう。

SUMIMETALが知り合った星氏が一眼レフで撮影した露天からの夜空

■９■ここの露天の湯の色は薄い茶褐色で、光の具合では再度の低い山吹色に
も見える。かなり綺麗な湯の色だ。長湯をしていても体に負担が来ない。内湯
は別の源泉のもので、やはり湯温は低めなので、露天で下がった体温和戻すた
めに加温しているので熱く感じるが、じっくり浸かればこの湯も実に優しい。

■10■しかしその加温するエネルギーや、自家発電等の経費もばかにならない
はずだ。この宿が頑張ってくれているから、間欠泉を湯船の中から眺めるとい
うこともできるわけで、その仕事そのものにも心より感謝したい。３．11以前
は５ｍも噴出してたというけれど、今後どうなることやら。良き未来を祈る。

　　　★所在地：〒999-0422 山形県西置賜郡飯豊町大字広河原字湯ノ沢448-2
　　　　　　　　　　TEL： 090-2275-2104　　https://www.kanketusen-yunohana.com/

　　　　・立ち寄り入湯料／600円 9:00～18:00 無料駐車場有。
　　　　・泉質／ナトリウム-カルシウム・炭酸水素塩-塩化物泉
　　　　・pH／6.6 (中性)
　　　　・冬季休業／11月中旬～４月中旬

人生丸ごと湯治日記（３７３）　2017.09.12 Tuesday