（106）太平温泉「天風の湯」

■名古屋は中川区の義母宅の近くに太平温泉「天風の湯」はある。オープンしたてはとても混んでいるという話を聞いてパスしていた。しかしネットで検索してみても近場には未訪の日帰り温泉がもうほとんどない。最近日帰り温泉に日替わり弁当のように日替わり温泉しているという指摘もあったりするが、今日はすでに日が落ちてしまったのと、ニフティの書き込み情報で思いのほか高評価なので行ってみることにした。それにしても最近はめっきり寒い。

■低張性・弱アルカリ性の単純泉で、湧出温度は34.2度Ｃ、湧出量不明記だから、加熱循環は覚悟の上だ。カーナビで見ると25分と近場だ。夕刻のラッシュアワーなのでもっと時間がかかるだろうと思っていると、カーナビが「交通事情が変わりましたのでルート変更いたします」と言って裏道を指示した。このあたりは子供の頃からテリトリーだったらしいうちの嫁さんも知らなかったというこの裏道のおかげで、ほぼ定刻通りに到着する。本当にカーナビはすごい。

■「メガネを探すメガネはどこ？」とは朝起きてコンタクトレンズを装着するまで使うメガネを探す嫁さんのセリフだ。私は昔、初訪の街に降り立って道が分からず、交番を探そうとして見当たらないので「交番の場所を教えてくれる交番はないのか？」と思った。友人が昔「メガネがあれば目はいらない」という不思議なタイトルのマンガを描いていたけれど、今日は「カーナビがあればカーはいらない」なんてマトリクスのような感覚を抱いてしまった。

　　

■入り口の自動券売機でチケットを買おうとしたら、月に２〜３回あるサービスデーらしく入泉料600円が450円になっていた。自らのラッキーさに感謝。ここでは少ない温泉を露天と壺湯にだけ用いて、あとの内湯や檜湯などは白湯を用いている。サウナは階段状にかなり高くまであり広めだった。450円で入ったのだから特に文句も言えないだろう。街中の夕刻だから銭湯感覚で混雑していると思ったが、さほどではなかった。食事処のメニューが総じて安い。

■温泉成分はナトリウムイオン182.3mg、カルシウムイオン38.7mg、カリウムイオン13.5mgなどの陽イオン総量244.1mg、塩素イオン315.3mg、炭酸水素イオン92.7mg、硫酸イオン2.9mgなどの陰イオン総量411.8mg、成分総量0.677g／kgというこれといって特注のないものではある。ただここには別料金300円を払えば遠赤外線を発する黄土とマイナスイオンを発する水晶を用いた黄土水晶房と、細胞を活性化させるという岩塩房にはいることができる。

■つぼ湯に入って目を閉じていると、お湯をめぐらす装置の振動だろうか、大きな潮騒のような低音が鳴り響いてきた。昔、夜の暗い砂浜の波打ち際に立って目を閉じると、その大きな潮騒に包まれて体ごと魂を海の中に引きずり込まれてしまう感覚を感じ、あわてて目を開けて周囲を確認せざるを得ない恐怖を思い出した。体の内外の音の響きと、目を閉じることの安堵と恐怖と…。そこを出て露天風呂に飛び込むと、十五夜の月が顔を出していた。　　　(on 20061205)

人生丸ごと湯治日記（１０６） 2006.11.06 Wednesday