 一日が安楽ではないことが予測できる時、心の中で「さあ頑張って行こう！」と自らを励起できる場合と、少々へこみ気味のまま打ち寄せる時の波間に為すすべもなく呑み込まれてしまう場合があるが、この差異は何だろう。自らを奮起させて肯定的・創造的に現実に立ち向かう姿勢を取るか、ろくな心構えもなく無防備で世界に対峙するかの違いが繰り返し続けば、その生き様同士のベクトルの差は開く一方だ。
しかしそうとは知っていても、自力でアクティブに世界に向かう生命状態を創出できない時もある。そしてこれが繰り返し続くと、世界は混沌であり自分は非力だと思い続ける鬱状態へと緩やかに移行してしまう。自分が失速気味だと気づいていない時は、ただそれに気づけばよい。しかし分かっていてもできない時は、身辺に不幸や大事件が起こるなりしなければ、受動的感覚の中に留まり滞っていく。自ら奮い立たせるのは心だけでなく、身体を実際に打ち震わせるなりして、停滞する意識モードを変えようとする現実的姿勢をまずは生じさせねばならない。
筋道だてて現状に対する思考を続ければ、自らの現状に満足しなくなる。宇宙空間におけるアストロノーツの姿勢制御にも似た、生命状態の姿勢制御だ。今のままでは良くないが、一体どうしたら良いのか分からないという状態は、「朝起きなくては、起きなくては」と思いながらまた夢の中に落ちていく状態に似いてる。「変わらなければと分かっているのにやる気が起こらない」というのは、実はまだ分かっていないのだ。
よい習慣を繰り返すという戦略は、意識がより遠くまで到達する可能性を高めてくれる。そしてその決断をするのはある特定の時ではなく、常にこの今、今、今なのだということを再度自覚しよう。自覚しようという意識の持って行き方そのものを変えうるのは、この瞬間瞬間の決断力なのだということ。この今という決断の時の自覚の仕方まで過去のハウトゥとして他者に示してしまっては、自由意志や自発性、自覚意識などを奪い、機械的生命体にしてしまいかねない。それを内包したパラドクス的な提示もあるが、まずは自ら語らずに現実として示すような生き様を持ち続けたいものだ。
負荷とは現状維持に対する外的抵抗だ。現状維持もまた１つのレベルとして簡単なものではないけれど、そこにもう少しだけ負荷を与え続けるということ。生物学的な成長のみならず精神的成長については、やはり同様に日々繰り返す生活をする上で、それを破壊するほど強烈ではない適度の抵抗が必要だろう。自然のまま何の抵抗も労苦もなく成長して大人になるということは、この上もなく幸運なことだが、実のところこの世界ではまずありえない。外的抵抗がみな精神的・身体的な外傷になるわけではない。生命活動を決定的に損なう類のものでない抵抗とは、むしろ成長そのものに必要不可欠なものだろう。
 様々な人の人生上の諸事件もまた、各人のそれに対する姿勢によって、成長の糧となるか障害となるかが決まってくる。過去の不幸を外的原因として自らの進む方向を自己規定して世界と接するような生き方は、明らかに閉じている。不幸すら幸福のバリエーションとして変容させうるような生き様を、自ら体得できる者とそうでない者との違いはなんだろう。できる者とできない者という分け方、認識の仕方自体にも原因がありそうだ。個を越えた外的要因としたり、幸不幸という表現で偶然の確率に還元させてしまうことなく、自らの心身をも介してどこまでも探求していくべきことである。
画像キャプション
右上：精神の部屋側からだけ窓外を見ても、身体を通して底冷えする冷気を感じられない。温泉は論ずるよりも入るもの。
中左：先哲は皆なぜ舌足らずなパラドクス的表現をするのだろうと思っていた。心の面点変換をすれば無矛盾とも知らず。
右下：多くの外国の人にとって、露天風呂はまだ恥ずかしくしかも熱い苦痛に満ちたものらしい。極楽・地獄共にここに。
テラバイト日記（２５０）20040320／20040422-replaced
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