 朝目が覚めると妙に寒い。カーテンを開けると窓の外は雪だ。１０センチ以上は積もっている。そういえば昨日は雪国のような灰色に重い雲がぐいぐいと空を流れていたっけ。ばたた…ドンッ。屋根から雪の落ちる音。空にはまだ雪が舞っている。軒から滴り落ちている雪解水がきらりと光った。振り仰ぎ見ると雲間から日が射している。いきなりの風花である。遠くで子供と母親の歓声が聞こえる。冬至間近の雪の朝、万歩計の試練はまたグレードアップである。今日は遠出を控えようかな。
万歩計を越しにセットして、いつも通り出発しようとドアを開けると、猫が飛び出してきた。しかし積雪に驚いて急停止するとそのままフリーズ。おらおら〜と言いながら抱き上げて、雪の上にぽふっと落としてみる。前足スタンプの出来上がりである。雪の上でまたもやフリーズした猫を見て思った。私は瞬間動物虐待者？猫にとっては生まれて初めての雪。やがて金縛りが解けると、彼は脱兎のごとく部屋の中に戻って行った。やはり猫である。
 いつも通り徒歩で朝の喫茶店でモーニングに出かける。足元でキュッキュッと鳴る雪を期待していたが、すでに解け始めていて商店街の人たちは除雪に忙しい。その間を縫って通勤通学の人々が足早に歩いている。駐車してある車の上にはみんな揃って雪の冠。見た目はイースター島のモアイ像が並んでいるようで、ちょっと間抜けな光景である。電線からドンッドンッと雪が落下する。鳥のフンより爆撃頻度はかなり高い。落葉してしまった樹木がまた白い花を咲かせている。白い雪に映える青空を背景に、最後の雪が舞う。
初めての雪道カウント歩行。万歩計キーパーに対する試練はまたもやレベルアップである。いつにも増して足を止める風景が多い。今日、この瞬間にしか見ることのできない景色たち。当然のことながら、個人はこの瞬間のあらゆる光景を同時に見ることができないのだから、今ここで見ている風景とその視座こそは私だけのものである。見えているものを大切に思うことは、とりもなおさず自分自身の視座を大事に扱うということでもある。そのような者にのみ、他者のそれらをも丁重に扱うことができるのではないだろうか。
降り止んだと思っていた雪がまたちらついてきた。さて今日の一万歩はどのようにして稼ごうか。
画像キャプション
右上：この日の積雪は１０センチほど。すっきりした青空に騙されて外でお茶していたらまた雪がガンガンと…。
左下：当家の猫どもにも生まれて初めての雪を切り取って体験させる。デルピーは前足を突っ込んではブルブル。
テラバイト日記（２２８）20031220
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