213bite

　三重県の湯の山温泉は四日市市から出ている近鉄湯の山線の終点からさらに車で１０分ほど奥まったところにある。しかし今日は先ずその終点駅の少し手前の踏み切りを渡り、線路端にある片岡温泉を訪れてみた。泉質に関しての造詣が深い郡司勇氏が、雑誌でこの温泉を好意的に紹介していたのである。この片岡温泉は湯の山温泉郷は属していない一軒宿の温泉で、いわゆる温泉本にもなかなか載っていないが、毎分６００リットルと豊富な湯量に加えて、源泉温度も４４．１度なので加水・加熱を一切していない心地よい湯質が味わえるとのことである。

　広い駐車はがらがらだった。１０００円を払って中に入ると、食事もできる大きめの休憩所や、体を伸ばせる休憩イスが並ぶ広い休息所などがあり、全体的にゆったりした雰囲気である。ここの施設自体には宿泊設備はあるものの、宿泊客を積極的に呼び集めようという営業努力をしているわけではなさそうで、普段はもっぱら日帰り入浴として機能しているようだ。しかし客自体は日曜日の昼間だというのにぱらぱらとまばらだ。私個人としては贅沢でありがたいのだが、こんなにいいお湯があまり人が入らないままどんどん掛け流されてしまうとはなんとももったいないことだと思い、ついこの施設そのものの経営改善方法まで考えてしまった。

　しかし実はそうではなかった。加熱用のボイラーや加水用のタンクなどの施設が不要なのに加えて、有り余るお湯は近くの温泉センターに分湯しているとのことで、そんなに商売熱心である必要がないのかもしれない。ここの入浴料金は普通の感覚では施設やホスピタリティ面のみを見ると高いようだが、温泉の泉質や湯量の面を思えば適正な設定だろう。掛け流ししている豊かなお湯は少しぬるりと感じるくらい滑らかで、広めの内湯で見ると無色透明というよりは少し緑がかっている。湯の流出口には飲湯用のカップがあることからも循環させていないことは分かる。一口飲んで見たが、味覚的には癖がなく味はほとんどしない。

　ｐＨ８．６のアルカリ性単純温泉と温泉表示には書いてあるが、体がとてもよく温まる。外の浅めの露天風呂は温度が少し低いが、こちらも横たわるように体を伸ばし、空を眺めながらゆっくりつかっていると気持ちが良い。広い休憩所で休んだり食事をしたりしながら１日ゆっくりするにはもってこいの施設である。もっと長居をしたかったが、御在所ロープウェイが終了する前に車に乗って湯の山温泉に急ぐことにした。ここは湯質が上質なうえに湯量も豊富なので、ぜひまた今度は１日がかりでゆっくり訪れたいものだ。

画像のキャプション
右上:片岡温泉の入り口はかなり地味だが、駐車場は広い。日曜日なのにこれでいいのだろうか？
中左:片岡温泉の内風呂は、窓枠を見ても分かるようにかなり広いが、良質の湯の掛け流しである。
右下:外の露天風呂は浅くて少しぬるめである。加温も加水もしていないので自然に温度が下がるのだろうか。

テラバイト日記（２１３）20031116-1