109bite

　相変わらずの飛び込み滑り込みの宿探しだ。宿はたくさんありそうなので、「温泉民宿田中屋」の看板が目の前にある町営の駐車場に車を止めて、状況把握すべく役場の宿泊案内所に飛び込んだ。しかしそこの業務は午後５時で終了してしまうという。温泉質・金額・夕日が見える部屋などという条件を兼ね備えたところを探すうちに、自分の勘違いで１時間早いタイムリミットが近づいて来る。原稿は３日前にアップし、約束の場所には３０分前に行くというタイプの私は、街に何箇所かある温泉案内所もまた５時で閉まってしまうことを知り、かなり憔悴し疲れ果ててしまう。

　大きなホテルは強気の値段だし、そもそも冷たいタイルと窓越しの日没はこちらが気にいらない。かといって小さな温泉民宿は規模が小さいので夕刻過ぎの飛び込みのお客は「すみません、今日は満員です」と断られてしまう。時間は過ぎる、宿はないのパターンで途方に暮れかかっていると、また目の前に「温泉民宿田中屋」という看板。ダメモトで入ってみると、もう料理はできないけれど素泊まりならＯＫとのこと。お願いしますと即決定する。

　結果的には万事宜しき結果となった。料金が１人素泊まり５０００円＋朝食１０００円と安いだけでなく、今日は６０人収容できるこの宿には他に客がないので、西日没をを見ながらつかる温泉も独占というか、２４時間全くの貸切状態になっていた。さらには自分の勝手な勘違いで沈むはずだった夕日も６時半ころまで顔を見せ続けている。空間的・時間的余裕は精神的な余裕のみならず経済的余裕にまで重なってくる。そこでようやくここ土肥温泉についても考え始めることができた。

<画像キャプション>　上右図：ギネスにも乗っている世界最大の花時計。この周囲に並べられた踏石群がすごい。
　　　　　　　　　　　下左図：町立駐車場横にあった海岸通りの民宿温泉「田中屋」は海水浴場に面している。

（１０９）20020830-4