 亡くなる人の数も葬儀の規模も変わらないのに、最近葬儀屋さんの純利益が上がっているという話を、野口整体の先生から聞いた。話の元は整体施術をしてもらうために訪れていたベテラン葬儀屋さんからだという。その理由は必要経費の一部が極端に減ってきているからだそうだ。そしてその減ってきている必要経費の元はドライアイスだと言う。
つまり亡骸を収めている棺桶の中に入れるあのドライアイスの使用量がぐっと減ってきているのだ。それはなぜかというと、人間の死体が腐りにくくなっているからだそうだ。整体師もベテラン葬儀屋さんも信頼のおける人物だから、ガセネタだとは考えにくい。おそらく真実なのであろう。
日本の高度成長期からこっち、ずっと食品と共に私たちが摂取している食品添加物の中の防腐剤や保存剤などが蓄積されていることや、現代的な病院で死を迎える患者の最後は点滴や薬漬けで腐り落ちるべき肉体そのものが薬漬けになっていることがその理由ではないかというのが、その整体師自身の解釈である。
バブルが弾けてからはただ安ければいいというものは食品でも売れなくなってきている。また消費者の自然志向に合わせようとする企業努力から、食品添加物などはずいぶん減ってきている気がするが、それでも長年の間に蓄積された有害物質は、母体を介して世代を超えて体内に残っているのだ。まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」ではなく、「コンビニ弁当が売れれば葬儀屋が儲かる」である。
しかし私がその話を聞いた時の最初の反応は、「おお、人間もとうとうフランシスコ・ザビエルやヨガナンダのように、死んだ後にも腐らずに花のようにいい匂いを発するような時代になってきたのか。」というお目出度いものだった。
 それはまあ別として、実際に最近の日本人は１世代で身長や体重の比が今までの人類史になかったような変化を体験している。つまり長胴短足にしてのっぺり顔だったはずの日本人が、まるで昔の少女漫画の中のキャラクターのように、長い手足で顔も彫りが深く目鼻もぱっきりした面長のハンサムや美人たちに変容してきいてるのは生物学的にも事実である。
そしてこれは日本に限ったことではないが、ＴＶやレコードを介して、いまやコンピュータや携帯電話が個人レベルで常備化してしまっている。個人を超えて様々な世界観が広く深く交差している現在、精神の変化も前代未聞のレベルで起こっているのだから、それがまた死後の肉体の変化にも表れているのではという憶測も、全くナンセンスな妄想として一笑に付すことは出来ない。
多分理由はもっと多様な事実の複合作用であろうし、平易に予測できないレベルの問題を含んでいるに違いない。単なる科学的分析や霊的次元での調整であるという言明のみでなく、さらなる多元的視座を持ってこの「人間の死体が腐りにくくなってきている」という現実を、過去を否定することなくよりよい未来に繋げる世界観の中で、「個々人レベル」でも早急にちゃんと捉えなおす必要があるのではないだろうか。
私たちはみな時の間、空の間を人の間の存在として、世の間を未来に向けて生を紡いでいる。はたして私の肉体は、今ちゃんと生きているのだろうか？私の精神はすでに腐り始めてはないだろうか？そしてあなたは…？
テラバイト日記（６４）20020206
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