leaf-１
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帰り路 19750612
上り坂は疲れます
子供達のくったくのない笑顔
雨が降り始めてきて
傘を開くその音
子猫が捨てられていて
道路工夫が優しく覗きこんでいます
バラの花はもう終わりですね
午睡 19750814
真夏の昼下がり
なめくじが
ぬめぬめと
額を這って
銀白の跡を
一刷毛残した
37億分の１の孤独 19750909
斜めなす弱日の中で
地層のように厚い本
光が夏の上で埃と戯れる
風にとんぼ返りをうつ頁
雷が鳴り悲しげな夕立ち
何が悲しいのかって？
………それが分かればね全ての妥協と矛盾が不純に見えるところには
決意はありえない 衝動のみだ
風邪をひいた自尊心 19750917
ひからびて多孔質の脳髄に
灰白色の蜜が溢れこぼれ落ちる
自由に己惚れた奴隷たち
気の弱い夢想児らの寝言
死に絶えた大気を柿色に染め
饐えた秋の陽が枯れた窓辺に降り注ぐ
近眼の男が遠めに恋をする
所詮無理心中のしそこない全ての妥協と矛盾が不純に見えるところには
決意はありえない 衝動のみだ
濡れた大地の上に 19751003
蛾が火を吹いて落ちた
雨に打たれて泥の中へ
羽ばたきもがき動かなくなる悲しげな男が踏んだ
陽気な娘が踏んだ
学生が踏んだ
幼児が踏んだ
老夫婦が踏んだひきつぶれてすでに
ゴミのように見える
雨が降りしきる路面に
秋の細雨が冷たく落ちるこの蛾に与えられた命は何か
この蛾の死に何か意味はあるのか
答えられる者の答は知りたくない
答えられぬ者のみが答を知っている
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