一つ分かった事がある。それは未知の体験をするため既成の意識状態の恒常性のたがを緩めるには、ある程度心身の健康態が（少なくとも現状では)必要であるという事だ。体調の優れない時や、感情的に不安定な時は、未知を体験してもその不健康の度合いによって歪んで知覚・認識されるからだ。そのためにも心身の鍛練を怠らぬ事が自戒として努められねばならない。
　意識をはっきりさせつつリラックスするとはこの意識態度・状態の事であろうか。つまり注意深く意識を集中していながらしかも既成の知識に汚れないでいるという事。

(193) 謙虚（19890221）

本当に謙虚な人は謙虚であるという意識すらないし、それは既に問題ではない。
謙虚であろうとする人は謙虚ではない。自分が謙虚だと認ずる人も謙虚ではない。
謙虚とは他人を評する形容句である。形容句はあくまで主観的なものである。
主観と客観が溶け合う次元では形容句はメタファーとなる。

(194) 悩みがないという事と、悩みを悩みとして認めないという事とは別である。
＜私＞の悩みは「私」の内の＜私＞の悩み、即ち「私」の悩みである。

(195) 「世界は私である」から「私は世界である」への論理的飛躍の間に全世界がすっぽり収まる。そこにこそ全世界が在る。

(196) 木立越しの満月に向かい言葉や観念でなく「月よ」と呼び掛けている時、私は私に呼び掛けている。打ち震える小枝を見る時私は私を見ている。私が、私に、私を、私で、私は、私よ、私、私、私…