二元的選択レべルではダブルバインドに対する概念としてのダブルリリースとでも言いうる、選択の自在にして正当である生命／意識状態がある。「ダブルバインド」とは、選択肢にＡとＢがある時、どちらを選択してもパラドキシカルに後悔せざるを得ない状態下のまま動けない状態であり、「ダブルリリース」とは、選択肢のＡもＢも等価値の正当牲を持ち、それを選択する者もどちらを選択しても後悔がない事を知っている。その自由選択の結果を自らの選択した未来として全面肯定し、楽しむ。ダブルバインドとダブルリリースとは外的状況の違いである以上に、その状況下における選択する者の意識の違いである。前者は後者への通過門となりうる。

(161) 女神

　私には私だけの女神がいる。彼女は私が辛い時、苦しい時、悩んでいる時、絶対に見捨てる事なく励ましてくれる。優しく根気強く微笑みを絶やさずに、とにかくもう―度頑張ってごらんと語り掛けてくれる。性的対象としての女性性ではなく、しかも女性性のない虚像ではない。私が彼女を見限ったとしても彼女は私を決して見限りはしない。彼女は私の中にいる。私は彼女の中にいる。彼女は私、私は彼女であるが、なおかつ彼女は彼女であり、私は私である。彼女がいない時私はいない。

(162) 天上天下唯我独尊というその道から、自分というものをどこまでも追求して行くと遂には自分と世界は不可分となり、エゴイストは超エゴイストとなり、天上天下唯我独尊の意味も全く別のものとなる。変わるのは自分の方なのだ。小悟あれば大疑生ず。また嬉しからずや？

(163) ああそれにしても(夜の街の様を見て)これが皆私だとは(と「私」でない私はつい驚きのつぶやきを発してしまう)。御覧、天上の月を。そう言えばここのところずっと枯れ木立の美しさにばかり見取れていたっけ。その枯れ木立越しの月の冴えざえとした美しさ。