（１４）雑踏の中で

雑踏の中では体を立ち止まらせるだけで摩擦が起きる
私は流れを乱されていら立ち始める
後ろから押されてむっとする (私が悪いんではない!)
立ち止まる者は他の者まで考えが回らない (私ならそんな事はしない)
ぼうっとしている者の顔に疲れを見て
自分もそんな顔つきかとはっとする
前に進めない
要領良く後ろから追い越す者にやられたと思う
この道を選択した事を後悔している
もう戻るに戻れない (私は運が悪い)
売り子の声が頭に響く
どこか息苦しい
私はどこへ行こうとているのか?
こんなにいらいらあせりながら
別に急ぐ必要もないのではないか?
本当に行く当てもないくせに

雑踏の中では心を立ち止まらせるだけで穏やかになる
私は流れの乱れに沿ってただ歩く
後ろから押されてもそれはそれ (そういう巡り合わせかもね)
立ち止まる者は他の者との区別なく流れだけを見る (あれもこれも皆私だ)
にこやかな笑顔に弾む生命を見て
自分もそんな心かとほのぼのする
前に進まない
追い越す者と追い越される者に小さな自然を見る
この道を選択した自分をただ受入れる
もう戻る事はないだろう (私はその時この未来を選んだのだ)
売り子の声に彼女も大変だろうと感じる
どこか爽やかだ
私はどこへも行こうとしない
こんなにゆるゆる流されながら
別に急ぐ事もないから急いでみる事もできたりする
行く処は何時も今のここだ